Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第7章 ホームズと、ワトソン?【工藤新一】
家に入ってもドキドキは収まらず、家族に「ただいま」とだけ短く告げて、すぐに自分の部屋へ入った。
カバンを置き、ヘナヘナとベッドに座り込み。
自分のおでこと、唇に触れてみる。ただの皮膚だけど。
大きく一息吐いて、今日の出来事を振り返る・・・
おもむろにポケットからスマホを取り出して、画面ロックを外してまた一人赤面する。
私の待ち受け、工藤先輩の写真なのだ・・・
それを見つめたまましばらくまた動けなくなり。
画面がフッと暗くなったことで我に返る。
連絡を取ろうと思った人がいたんだった。
サッカー部時代の先輩マネージャー(女)だ。
私が工藤先輩のこと好きなのも知ってて、いつも色々な意味でお世話になってた人。
メッセージアプリを開いて、“相談したい事があるから夜電話できませんか”と送ると、すぐに“いつでも電話してー!”と返ってきて。
着替えて急いで晩ごはんを済ませ(あまり食欲はなかった)、また自室に籠る。
先輩に電話し、今日あったことを報告する。
工藤先輩に“好きだ”とか“付き合おう”とか言われた訳ではない、なのに・・・手を繋いで歩いたり、キスなんて三回もした。
これは一体どういう状態なんでしょう、と泣きそうになりながら聞く。
「へー!工藤くんやるねー!ついにだね・・・よかったじゃん」
「よかったですけど・・・でも」
「だいじょーぶ。工藤くんは誰にでもそんなことするタイプじゃないよ、ちゃんとのこと好きだって」
「ほんとですかー?うぅ・・・っ」
「何が心配?」
「だって工藤先輩ってモテるし・・・私なんか・・・」
「・・・あのね、さっき大丈夫だって言ったの聞こえなかった?」
「はい!あ、いいえ!聞こえました」
「まあ・・・明日工藤くんにハッキリしとけって言っといてあげる」
「ええっ!?そんな」
「じゃー自分で言えるの?」
「無理です・・・お願いします・・・」
「はーい、じゃあメソメソしない!」
「はい!」
その後も気付いたら世間話を続け。かなり長電話になってしまった。
通話を終了して、スマホを見れば何やらメッセージが届いている通知が見え。
メッセージアプリを開いてまた固まってしまう。
送信元は工藤先輩だ。
(サッカー部のトークグループはあったけど、個人的に連絡を取るのは初めてだ)