Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第7章 ホームズと、ワトソン?【工藤新一】
「とにかくだ、そんな風にしてたら男は勘違いしちまうだろ?コイツは自分のこと好きなんじゃねーかって。気ぃ付けろよ」
・・・好きだからそうなってるんだけど。
なんで先輩は気付かないんだろ。
ああでも中道先輩言ってたな。“工藤はそういうの鈍い”って。
少しでも気付いてほしくて・・・俯いたままなんとか声を絞り出す。
「私、工藤先輩と話してるときしか、こんな風にならないから・・・大丈夫です」
「・・・それ、どういう意味だよ」
急に腕をガシッと掴まれ、身体が硬直する。
どういう意味って・・・そういう意味に決まってるのに。
「分からないんですか?いつも、私、工藤先輩のことしか見てなかったのに。今日だって久しぶりに会えてすっごく嬉しくて」
なんとか顔を上げて先輩の方を向くと、一瞬目が合ったけどパッと逸らされてしまい。先輩は斜め下を見つめてる・・・でもその頬は少し赤い気がして。
「先輩?」と首を傾げて呼びかけると、再び目が合い。今度は逸らすことなくそのまま無言で見つめ合う。
時間が止まったみたいに、動けない。
静かな部屋に、自分の心臓の音だけがうるさく鳴り続けていて。先輩にまで聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい・・・
「お前・・・っ」
「っえ・・・」
掴まれたままだった腕を更にギュッと握られたと思ったら、次の瞬間先輩の方へ引き寄せられて。
気付いたら、先輩の顔が目の前にあって、というか唇に柔らかいものが触れて、離れた。
・・・キスしたみたいだ、と頭で理解した途端、何が何だか分からなくなってきた。
キスって、付き合ってる人同士がするものだよね・・・
私の初めてのキス・・・
「先輩・・・これ、夢ですかね・・・」
「夢じゃねぇって・・・信じられねーなら、もう一回するか?」
「え、あの・・・」
「目ぇ閉じろ」
「・・・はい」
ぎゅっと瞼を閉じる。
一呼吸置いて、先輩が近付いてきた気配がして・・・唇に温かいものが触れる。チュ、っと小さな音を立てて、それは離れた。
・・・夢じゃないみたいだ。
「、そんな顔俺以外に見せんじゃねーぞ」
「どんな顔か分かんないんですけど・・・多分大丈夫です」
「多分じゃダメだ、絶対だ」