Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第7章 ホームズと、ワトソン?【工藤新一】
工藤先輩がモテるのは、知ってる。
でもファンレターが山のように来るとか、今みたいに隣のこんな綺麗な子が“喋ってみたい”なんて言うのを聞いてしまうと、なんだか胸が切ない。
工藤先輩に彼女がいるとか、今まで聞いたことは無かったけど・・・いてもおかしくないのだ。
私が知らなかっただけなのかもしれない。
もしいるんなら・・・寂しいかも。
そんな事を考え出すと、午前の授業は気が気じゃなくて。
進学早々上の空で、文字通り斜め上を向きながら過ごした。
そして昼休みになる。
今日が、高校でお昼ご飯を食べる初めての日だ。
なんとなく、クラスの中の中学からの知り合いと固まり、この辺で食べようか、と位置取りを決めていた。
お弁当を食べたら、工藤先輩が来るのだ。
・・・なるべく急いで食べよう、と思ってたら。
「ー」
「はっ・・・はい!」
唐突に廊下から工藤先輩と思われる声で呼ばれ。
・・・昼休み空けとけって・・・こんなに早くから!?と、頭がパニックを起こしかける。
昔も、“サッカー部、昼飯食ったら部室集合”的な事はあったから、てっきりそんな感じだと思ってた。
廊下に顔を向けたまま、その場で動けず固まっていると、更に声が掛かる。
「何してんだー?早く来いって」
「え、あ・・・はい!」
広げようとしていたお弁当を仕舞い、友人達に謝って教室を出る。
すぐに歩き出す先輩の少し後ろを早歩きで追いかける。
「あ、あの・・・どこに?」
「言っても分かんねぇだろ。とりあえずついて来いって」
まだ慣れない校舎の中、とりあえず先輩の後ろについて行く。
階段を登って、廊下をまた歩き、辿り着いたのはたしかにどこかよく分からない教室。
引き戸を開けると中には数人の男子生徒・・・中道先輩に、サッカー部で一緒だった相沢先輩もいて。
窓際でお弁当を広げている。
サッカー部仲間でランチか。
でも、工藤先輩は落胆したような声を発する。
「なんで相沢達がいるんだよ・・・」
「いちゃ悪ぃかよ、おっじゃん」
「お疲れ様です!お久しぶりです!相沢先輩!」
なんか昔の部室を思い出す光景だ。
なのに工藤先輩はその輪には混じらず、離れた所の椅子に座り、その前に私も座るよう促す。
窓際の先輩達に軽く会釈をして、工藤先輩の前に座る。