Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第1章 月夜に現れた紳士は【キッド/快斗】
「ほらほら、勉強の話じゃねーんなら戻れ!は忙しいんだから」
声の主は、松田という男の先生で。
高校時代に私もお世話になっていた国語の先生だ。
「ちぇー・・・なんだよまっちゃん・・・」
「またなー!ちゃーん!」
松田先生はシッシッと虫を追い払うように彼らを退散させ、近くの空いている椅子に腰掛けた。
「松田先生ー!助かりましたー・・・」
「いいのいいの、でも教師になったら、あれくらい自分であしらえるようにならなきゃな」
「ですねー・・・」
「んじゃ、支度できたら準備室に来てな」
「はい!」
松田先生が椅子を戻して職員室から出ていくのを、思わず目で追いかける。
実は彼は高校時代の憧れの先生でもある。
堅苦しくないフランクな雰囲気で、そこそこ顔も格好良くて。
女子生徒から絶大な人気があった先生。
友達の中には彼に本気で思いを寄せていた子までいた。
私はそういう感情を持ったことは無いけど、今見てもやっぱり素敵だなーとは思う。
「ー?もしかして松田先生好きだったりする?」
「好きでしたよー?勿論先生として、ですけとね」
「ふーん・・・まあ、午後も頑張って!」
「はーい」
「返事は短く!」
「はい」
歯を磨いて化粧を直して、国語準備室へ。
今日の午後は松田先生の授業を見学させてもらうことになっている。
準備室の扉をノックして中へ入ると、数人の女子生徒に囲まれている松田先生が奥の机にいて。
キャッキャと高い声が狭い室内に響いている。
私に気付いた先生が、女子生徒達を帰らせるけど・・・
すれ違いざまに彼女達に睨まれながら、先生の机へ向かう。
女子高生こわーい。
「相変わらず人気ですねー松田先生は」
「もたまに来てたよな」
「今だから言える話ですけど、先生のこと好きだった子がいたんですよー。私はその付き添いです」
「へー・・・ま、なんとなく分かってたけどな」
「ですよねー・・・で、午後の授業は何年生ですか?」
「早速授業の話か?真面目だなー・・・二年だ、5限目は紺野先生のクラスの古文」
「今どこやってるんですか?」
「んー・・・今日は、ここから」
教科書をパラパラめくる手元を覗き込む。