Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第6章 眼鏡と読書が趣味なんです。【沖矢昴】
ちょうど昼食休憩を終えて隣に戻ってきた同僚に、小声で報告する。
「あの眼鏡のハイネックの人。今日も来ました・・・」
「あーあの?好きですねー図書館・・・」
「その人とさっき、少し喋っちゃって!」
「うそ!何を?」
「あの、コレ見てたら私、顔が歪んでたんですかね、お困り事なら力になりますよ?って・・・」
「うそうそー!もしかしてさんに気があるんじゃないの?」
「無いでしょ・・・」
「まさかさんに会いたくて図書館に来てるとかー?」
「ちょっと!声大きいですって・・・」
「あ・・・ごめん。でもいいじゃないですか・・・さん、言ってましたよねー?ああいう人好きって」
たしかに、あの人の外見は物凄く好きなのだ。
だから余計に何をしている人なのか気になる訳で・・・
返ってきた書物を、所定の場所に戻すのも司書の仕事だ。
どの本がどこの棚にあるかはほとんど把握している。
台車に本を積んで館内を回っていると、例の男性が棚の前で本を選んでいるのを見かけた。
あそこは物理工学的な書物が並ぶゾーンだ。
読んでもサッパリなことしか書いてないから、いくら私が本好きでも、あの部類の書物はほぼ読まない。
しかしそこに戻したい本が一冊だけここにある・・・けど、どうも近付き辛くて。
他の本から片付けて、そこは最後に回すことに決める。
最後に回したはいいものの、全ての書物を戻し終えて再びそこに向かうと、まだその男性はそこにいて・・・
仕方無いと諦めてその棚へ向かう。
そしてこれは何の悪戯か、仕舞いたい書物のある場所の真ん前に彼が立っており・・・
「すみません・・・」と声を掛けて書物を手に取り、棚へ手を伸ばす。
「おや、その本・・・」
「あ・・・」
手から書物をひょいと取られた。
「以前来たときに気になっていたんです、貸出中だったんですね」
「ええ・・・先程返却されました。どうぞ」
「・・・眼鏡、良く似合ってますね」
「あ、ありがとうございます・・・」
びっくりした・・・まさかまた話掛けられるとは。
その場を立ち去ろうと彼に背中を向けた。
「あの、」
「はい?」
呼び止められた・・・
なんの用があると言うのだ。