Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第6章 眼鏡と読書が趣味なんです。【沖矢昴】
趣味と実益を兼ねた職業に就いている人って、滅多にいないみたいだけど・・・
私は運良くそういう職場で働けている。
小さい頃から本が大好きで、“はきっと頭が良くなるよー”なんて親に言われながら育ったけど、実際の学力はそこそこ。
でもとにかく本が好きなのは変わらず、現在図書館に司書として勤務している。
大好きなものに囲まれて仕事ができるって幸せである。
受付に座り、返却が遅れている書物のチェックをしていた。
返却期限を一ヶ月以上過ぎているものもザラにあったりする。
図書館は勿論無料で本の貸出を行うし、返却が遅れても延滞金を取ることはないけど・・・
だからって遅れていい訳では無い。
PCモニターを睨み、溜め息を吐く。
「どうかされましたか?」
「あっ、いえ!こんにちは」
「何かお困り事なら力になりますよ」
「大丈夫です!ありがとうございます」
「こちらこそ突然話し掛けてしまってすみません。あなたの様子がいつもと違ったもので気になって」
最近、突然よく来るようになった利用者さんがいる。
今まさに私に話し掛けてきたこの男性だ。
この人が書物を借りたことはないので、誰も彼の名前は知らないけど、いつもお昼すぎに現れ、子どもが増え始める夕方には帰る、といった感じで週に二、三回現れる。
無職なのか、夜からの仕事でもしてるのか。
昼間にこんなペースで来る利用者さんなんて、老人か子どもくらいなので、彼のことは来る度気になっている。
明るい髪色に眼鏡、スラッとしてて格好良くて。歳は30前後だろうか。どことなく儚い色気が漂ってて。
あともう一つ特徴を上げるとしたら、いつもジャケットにハイネックなこの人。
いつもは挨拶を交わす程度だったけど、今日こうやって初めて言葉を交わした。
「失礼しました。では・・・」と彼は微笑んで本棚の方へ歩いていく。
話した感じはすごく紳士的だ。
益々何をしている人なのか気になっちゃう・・・