Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第38章 Top priority -最優先事項-【降谷零】
過剰なくらい丁寧に唇を合わせていると、何か温かいものが流れ込んでくるように感じる。
多分こういうのを“幸せ”って言うんだろう。
上唇を優しく吸われて、その次は下も…柔らかく触れ合うだけのキスを幾度も繰り返す。
ギュっと抱き締められて、なんだかもう胸がいっぱい……
長い間そのままでいて…ふっと何かを思い出したように私達はまた通常を取り戻す。
零が手の平でお湯を掬って、肩から掛けてくれた。
「寒くないか?」
「大丈夫、ありがと……でもほんとよくこんな良い部屋空いてたね…花火の日なのに」
「そりゃあ…最初に確認した時は埋まってたさ、でも諦めなかっただけだ」
「なるほど…ラッキーだったんだ」
「…まあな」
「零のお休みも取れて、呼び出しもなかったし。ほんとツイてたね」
「…それに関しては、少し細工をした」
「細工…?」
「知ってるだろうけど、警察って24時間365日仕事みたいなもんだ、いかなる時も有事の際は国民への奉仕が優先される」
「まあ…そうだよね?」
「でも、休暇に寛大な時もあるんだ」
「え!そうなの?」
「例えば、結婚を控えてる時……相手の両親に挨拶に伺う日とか、結婚式の日なんかは余程の事がない限り非番になる」
「へえ…」
「今回僕は、に結婚を申し込みたいから絶対この日は非番にしてくれ、って頼んだ」
「うわ……もしかして零の部署の人みんなにバレてる!?恥ずかしいんだけど!」
「そもそも警察組織ってそういう所だ」
「…そうだったね」(警察って恋人の有無、いる場合は相手の個人情報まで報告しなきゃだった、それに結婚するとなれば相手に身辺調査が入るって噂も…)
「あんなブラック企業はそうそう無いだろうけど……愛する人こそ大事にしろって風潮も強い…」
彼の声色と顔付きがキリッと凛々しくなった。ほんと、こういう時の零って欲目抜きでカッコイイ。
零の首元に両手を絡めて、マジマジとその顔面を見つめる。
「……誇らしいと思ってるでしょ」
「ああ。誇らしいな」
「うん。私はそんな零の隣にいれることが誇らしいよ」
「僕の隣がでよかったよ…」
また何度も唇を重ねては、見つめ合い……
夜は更けていく。
END →次ページは、おまけとあとがきです。