Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第38章 Top priority -最優先事項-【降谷零】
宣告通り、花火が終わってしばらくで食べ終えた食器を下げに仲居さんがやって来て、大きなテーブルの上はすっかり片付いた。
零と広い座卓を挟み向かい合って座椅子に座り、畳へ脚を伸ばす。慣れない浴衣だと思うように脚を動かせない。ただ座るだけでも少し面倒だ。
「零、今日はありがとうね…まさか花火に温泉まで付いてくるとは」
「が満足してくれたなら、よかったよ」
「大満足だよ!でもよく予約取れたよね、花火の日にこんないい部屋…」
「まあな…」
「…あ、」
座卓の下で伸ばしていた足の先に、零の足先が触れた。器用なもので、彼はそのまま爪先で浴衣の裾を割って私の脚に滑らせてくる……くすぐったい。
「ふっ…はははっ……そろそろお風呂にする?」
「もちろん一緒に入るだろ?」
「…いいけど…変なことしないよね?」
「さあ…どうかな…」
どういうつもりか分からない不敵な笑みを浮かべながら立ち上がり、私の真後ろにやってきて腰を下ろした零。髪に触れられ一体何をされるのかと思いきや…髪に刺されたピンを1本ずつ抜いてくれているようだ。
「あ、ありがとう…」
「ああ。痛くないか?」
「大丈夫…」
「女は大変だな」
「そうかもね…女でよかったけど」
「そうだな…が女の子でよかったよ…」
花の髪飾りが座卓に置かれ、おそらくフワフワのバリバリ状態であろう髪を零の指が優しく梳く。その感触からしてピンは全て外されたようだ。
「可愛いけど…脱がなきゃ風呂にも入れないよな…」
「うん…」
「待て。僕がやる」
帯に手を掛けようとしたら、やんわりと手は払いのけられた。零の目付きが熱を帯びてほんのり赤くなってきている…無事にお風呂を済ませるのは無理かもしれない。
零の方を向いて座らされると、私の身体を抱き締めるようにして背中の方へ彼の腕が回ってきた。目の前には零の胸元、不意に抱き着きたくて腕を伸ばしかけるも、これまた器用なものであっという間に帯を緩めたらしい零の身体は離れていく。
締め付けが軽くなりラクになった開放感と、若干の寂しさも感じるものの…漂い始めた甘い空気に胸が高鳴り出す。
様子を伺うように零の顔を覗き込めば、まるで舐めるように全身にゆっくりと視線を送られていることに気付いてしまい…どうにも恥ずかしくて、瞼を伏せた。