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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第38章 Top priority -最優先事項-【降谷零】


突如、ヒュー…っと笛のような音がして、濃紺の空にパッと大輪の光の花が咲いた。花びらが散り消えては次から次へとまた新しい花が咲いて、また消えていく。

一際大きな音が空気を揺らせば、視界いっぱいに広がる大きな花。思わず立ち上がり、窓際に寄ってガラスに手をつく。

火花がここまで降ってくるんじゃないかと思うくらい近い!


「すっごい!今のおっきかったねー!」

「…そうだな」

「えっ!」


くるりと後ろを振り返れば、クスクスと可笑しそうに笑う零がすぐ近くに立ってたから驚いた。年甲斐もなくちょっとはしゃぎすぎたかもしれない……平静を取り戻し窓の外の花火へ視線を戻すけど…次々に打ち上がる大きな花火に興奮は収まりそうにない。


「うわっ…!わぁ…」

「今のも中々だったな」

「うん!すごかった…」


真横にやって来た零が、私の帯の下の方…つまり腰に手を回してくる。軽く引き寄せられたことでチラッと視線を隣へ向ければ、彼はいつからこっちを見てたんだろうか、バッチリ視線が重なってしまった。しばらく逸らせずにそのまま見つめ合う。

花火が上がる度に照らされる零の頬…明るい色の髪は輝いてるようにも見える。

何度見ても惚れ惚れするくらい(憎いくらい)綺麗な顔立ち…その顔面がゆっくり距離を詰めてくる。

次の瞬間には唇が重なり…ゆっくりと離れていく。でも何故かそれが名残惜しくて、目で零の唇を追いかける…

が、特大の花火が上がったと思われる大きな音で私の視線は再び窓の外へ。

開いて散っていくそれは、今日一番の大きさじゃないだろうか。


「わっ!…大きーい…きれーい…」

「…はもっと綺麗だけどな」

「ありがと…」


聞くだけで恥ずかしくなるようなセリフも、何故か今日はすんなりと受け入れられた。


いつの間にか自分の身体は零の腕の中にすっぽり収まる形になっていて。お互いの指先を絡めて、背中に零を感じながら、空を眺めていた。




続いていた花火がついに途切れ、しばらくの静寂の後……“これで最後”と言わんばかりの特大の花火が打ち上がり、開き、散っていって……唯一空に残っていた煙さえも見えなくなり……おそらく花火大会は終わった。


何とも言えない空虚感。僅かに背中を零に預けて、繋がれた指先をゆっくりと動かせば、キュッと抱き締められ、耳元に唇が落とされた。
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