Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第38章 Top priority -最優先事項-【降谷零】
大きな木製の座卓を贅沢に使い、様々な皿に盛られた料理が二人分、向かい合わせに並べられていく。
豪華なお刺身に、繊細に盛り付けられた数種類の先付けはどれも美味しそう…色んなものをちょっとずつ食べれるって嬉しいな…
あの蓋を被せられた小鍋には何が入ってるんだろうか…ん、なになに?聞けば後ほど天ぷらやお魚にお肉もやってくるらしい。
さっきまでの複雑だった感情は何処へやら、目の前の料理に気分は一気に上向きだ。
「美味しそーう…いただきます!」
「その前に。、ビールも飲むか?」
「……う…でも零は飲まないでしょ?」
「いや。今日は大丈夫だ」
「いいの!?じゃあ飲もう!」
普段はいつ上から呼び出されるか分かったもんじゃないから、お酒は飲まないことが多い零(一緒にいる時は気を使って私も飲まない)。まあ、隣県まで出てきてる彼が今日東京に呼び戻される可能性は低いか…いや、ありえるのが警察組織……
でも彼が“大丈夫”と言い、大丈夫じゃなかったことは…今まで一度もなかったように思う。
備え付けの冷蔵庫から瓶ビールを取り出し、栓抜きと小さなグラスと共に持って座卓に戻り、零に片方のグラスを差し出す。注いで、注いでもらって、グラスをカチリと合わせる。
“乾杯”と、改めて“いただきます”をして、ビールを飲みつつ箸を料理に伸ばした。
こうやって零とお酒を一緒に飲めるのはいつぶりだろうか…料理も美味しいし、これだけでももう大満足だ…
食べ進めるうちに、出来立ての天ぷらや焼き魚、お肉料理も運ばれてきて。
「花火が終わった頃にお皿を下げに来ますね」と仲居の女性が告げて部屋を出ていき。窓の外を見れば、空が濃い紺色へと変わってきていた。
そしてあらかた料理を食べ終えた頃、パーン…と一発、花火のような音が聞こえた。二人して外の方向に顔を向ける。
「あ!始まるね!」
「だな。全部食べれるか?」
「頑張る…でも帯キツくなってきた…」
「…解いてやろうか?」
「ッ!だめ!解いたら直せない…」
「なんとかなるだろ」
「ならない!」
また小競り合いをしながらも、急いで料理をお腹に入れて、私達は縁側のテーブルに移動した。待ってました、いよいよ花火だ。