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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第38章 Top priority -最優先事項-【降谷零】


理性が途切れる前に零から離れ、無言でジッと彼を睨む。が、すぐに慌てて視線は逸らした。どうしてって…零の顔付きが思いのほか熱っぽかったからだ…今そういう雰囲気に持ち込まれる訳にはいかない。

立ち上がりそそくさと荷物を片付け、露天風呂の様子を訳もなく伺いに向かう。大きな窓ガラス越しに見てみれば、ずっとお湯は湯船に流しっぱなしのようで、いつでも入れそう。

薄暗くなってきた遠くの空には星が見え始めていて。

旅館の建物の外、川を挟んで少し離れた所には屋台の群れと人だかりも見える。花火大会の会場はあの辺りか。


……窓ガラスに、後ろから近付いてきた零が映り込む。


「花火、ここの部屋からも綺麗に見れるみたいなんだけど、はどうしたい?会場まで行きたいか?」

「そっか…!」


あそこが会場で、この距離なら、たしかにここからでも花火は見られるんだろう…人混みにわざわざ向かわずともここで見れるなら……


「…ここで見たいけど…屋台も捨て難い…」

「なるほど。もし迷ってるなら、僕としてはココから見たいんだけどな」

「そう?じゃあそうしよっか」

「ああ。こんなに可愛いは…誰にも見せたくないからな…」

「…なにそれ」

「何ってそのままだ。他の男の目には触れさせたくない」

「別に見られたって何も減らないって」

「減る…」

「減らないってば」

「うるさい、だまれ…」


後ろから身体の前面に零の腕が回ってくる。目の前の窓ガラスを見れば彼が何をしようとしてるかは一目瞭然だった。でも逃げることも出来ず。

両腕で抱き締められて、頭のてっぺんから髪飾りに、耳の縁に、首すじにも…唇が落とされていく。

甘く柔らかく唇が触れてくる心地良さに瞼を伏せれば…全身の力が抜けてしまいそうな感覚に陥る……

帯の上をするりと零の指先が滑り、浴衣の合わせから手が滑り込もうとしてくる…その手を掴んで、帯の方へ戻す。


「零…だめ、だって…」

「……分かってる」

「絶対分かってない」

「…こんなに可愛いのに触れられないなんて、中々の忍耐力が必要だぞ」

「努力と忍耐の警察官様が何をおっしゃいますか」

「それとこれとは話が別だ。僕は」


小競り合いのようなものを続けていたら、部屋の入り口から声が掛かった。絶妙なタイミングだ、食事の準備ができたらしい。
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