Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第38章 Top priority -最優先事項-【降谷零】
「休みも外泊も取れたし、この日にしよう、泊まれる準備もしてこいよ?」
って電話で零に言われた時はその場で踊り出してしまいそうなくらい嬉しかった。花火に行けるだけでも浴衣で遊びに行けるだけでも充分だったのに…お泊まりも付いてくるとは!
「うんっ!……あーでも…何も起こらないといいよね…事件とか」
「大丈夫だ、手は打った。心配いらない」
「…どういうこと?」
「だから、は何も心配しなくていいんだ」
「そうなの…?じゃあ、楽しみにしてるね?」
「ああ」
その後、早速いつもの美容室に電話して、着付けとヘアセットの予約をした。(私は浴衣すら一人で着れなければ、髪の毛だって学生時代はずっと短かったから今までヘアセットには縁がなかった)
毎朝毎晩指折り数えながら、やってきた当日。
ちなみに私は今日も明日も仕事は休み。(零は日勤を早上がりするらしい)
朝からソワソワ落ち着かず、ニュースを見ては都内で事件が起きていないか確認し。
お泊まりの準備を万全に整え、約束の時間の1時間半前、真新しい浴衣を手にし、いつもの美容室の扉を開けた。
ちょっとやそっとじゃ崩れないようしっかり着付けてもらい…やっぱり和装は歩きにくいなと思いつつ、いつもの座席に座る。
顔馴染みの店員達(女子)に「今日は浴衣デートですか〜?羨まし〜い!」「いいな〜!」なんて声を口々に掛けられ気恥ずかしい思いをしながら…髪にピンやら何やらをいくつも刺される。
私の髪はそんなに長くない、だけれど美容師にかかれば私の中途半端な長さの髪もまるでロングヘアの人がアップにしたような髪型に変貌していく。すごい技術だ。
そしてセットし終わった自分を鏡で見てみると、自分が自分じゃないみたい。自分で言うのもアレだけど、ちょっと…綺麗になったかも。
「カワイイ!」「お似合いです!」なんて黄色い声で言われることには慣れなくてなんだかソワソワする……でも零もそう思ってくれたらいいなって…考えてしまって…余計に落ち着かなくなってきた。
会計を済ませ美容室を出て……零に連絡を入れようかとスマホを手に取った瞬間、その彼から電話が掛かってきてビクッと全身の動きが止まる。
電話に出れば、あと30分程で迎えに行ける、ってことだった。しかも結構(いや、かなり?)楽しそうな声だった…珍しい。嬉しいけど。