Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第38章 Top priority -最優先事項-【降谷零】
零の住む寮の門限は22時。今日は外泊の許可は取ってないので、差し迫ってきた残り僅かな時間がものすごく惜しいところ。(ちなみに外泊は基本的に週に一度まで、と決まっている)
次こそは、夏こそは、と胸に秘めていたことを…思い切って切り出してみる。
「あのさ、零…?」
「どうした?」
「二人で花火とか…行きたくない?」
「……そりゃ…は、行きたいよな」
歯切れ悪そうに応えた零。聞く前から分かってはいた。気を遣わせてしまってることは重々承知だ。大きな花火大会でもあれば、普段以上に警察人員をそこに割かれて忙しくなるのは当然だし……
「……でも忙しいよね…やっぱ無理かな…?」
「桜のこと、まだ根に持ってるか?」
「あれはもういい。仕方なかったもん」
「……帰ったら日程とか、調べてみる。行く方向で計画立てよう」
「いいの?」
「なんとか、しよう」
「うん…」
「その代わり、絶対に浴衣で来いよ」
「えっ……うん!分かった!」
浴衣で花火…ますます楽しそう!でもまあ、またダメになる可能性だってあるから、期待しすぎないようにしないと……それでも期待で胸は膨らむ。
「行けたらいいなぁ…」
「僕だって行きたい…」
「ふふっ」
零の胸辺りに頭を擦り寄せるようにして抱き着けば、優しく頭を抱き寄せられる…けどその数秒後、グイッと身体は離された。
「…ごめん、これ以上くっついてるとマズい」
「あー……そうだね…」
おそらくムラっとしかけたってことだろう、私はそうなったって全然構わないんだけど……時計を見ればもう寮の門限は近い。若干の気まずさを引きずりながら身体を起こし、服を着て、二人で玄関へ向かう。
唇に触れるだけのキスにゆっくりと時間を掛けて……零は家を出ていった。
浴衣って…もう何年も着てない。学生の頃に買ったものなら実家にあるはずだけど…さすがにアレ(ちょっと派手なデザイン)はもう年齢的に無しだな…新しいの買いに行こう。
髪も伸びたし、せっかく浴衣着るんなら綺麗にしたいな…
あれ…?もしかして零も浴衣着てきてくれるのかな…
眠りに就くまで、ずっとそんなことばかり考えていた。