Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第1章 月夜に現れた紳士は【キッド/快斗】
教育実習1日目。
数年前まで毎日歩いて通っていた道を、制服じゃなくスーツに身を包んで高校へ向かう。
時間は当時より一時間も早いけど。
学校に着いて、つい慣れた方の玄関へ向かいそうになる足を、職員用玄関の方へ向けて、校舎へ入る。
そして教室ではなく職員室へ。
私の実習を担当してくれる教師は、高校時代の担任だった女の先生。
美人だけど凄く厳しかったから・・・実習もそれなりにキツいものになりそうな予感しかしない。
「失礼します」と口にしながら職員室に入り、近くの教師に挨拶をして、辺りを見渡すと・・・ああ、いたいた。
「紺野先生ー!お久しぶりです!」
「ー!こっちこっち!」
先生は、久しぶりの再開と、私が教師を目指していることを凄く喜んでくれた。
「スーツ姿だとすっかり大人みたいに見えるね」
「もう大人ですよー!働いてる子だっていますし。ほら、〇〇ちゃんとか」
当時のクラスメイトの話で一頻り盛り上がり、本題の実習の話に入る。
噂通りのハードスケジュールを提示され、思わず顔が歪んでしまい、早速叱責を受け・・・
職員会議に参加し、母の知り合いの教師にも挨拶を済ませ、紺野先生と共に朝のホームルームをしに教室へ向かった。
今先生は二年生を受け持っているそうだ。
教室のドアを開け、先生が入ると、急に中が静かになって各々の席に着く生徒達。
紺野先生の厳しさは今も健在なんだろう。
先生の後ろについて教壇に上がる。
挨拶と自己紹介をして、出欠を私がとることになる。
そこで勢い良く後ろのドアが開き、ふわふわした頭の男子生徒が駆け込んできた。
「フー・・・間に合ったぜ」
「黒羽快斗!間に合ってないでしょ!遅刻よ!」
「朝から大声出さない・・って誰だ?横の綺麗なねーちゃん・・・」
「今日から教育実習で来たさん!早く席について!」
「へー・・・ちゃんね・・・」
クラスに一人はいたよね、こんな男子。
彼は何か言いたげな顔でこっちを眺めている。