Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第37章 その唇、食べちゃいたい。【萩原研二】
商品のキャップにそれぞれ刻印を入れ、丁寧にラッピングも施して……
翌日、その“萩原”様がいつやってくるかと若干ソワソワしながら待っていた。(彼のこと、“変人”だとは思うものの、不思議と会いたいとも思ってるのだ)
でも開店からフロアに入ってくるのは女性客ばかり。
昼過ぎになっても彼は現れず、自分の休憩中に取りに来ちゃったら残念だなーと思いつつ休憩もしたけれど……そんな心配も無用に終わった。
施設の閉館30分前になっても2つ並んだ小さな紙袋はカウンター下に置かれたまま。
ぼちぼちと閉店に向けて作業をしていた所、後ろから聞き覚えのある男性の声がして、その場で飛び跳ねそうになった。
「ちゃーん!取りに来たよ!」
「は!はいっ!お!お待ちしてました!」
「元気いーね」
「そ、それほどでも…」
閉館ギリギリで彼が現れ、カウンターの下から紙袋を2つ取り出し、ようやくお渡しできた。
「どっちがどっちか分かるように付箋貼ってあるので、お渡しの前に外してくださいね。こちらが“チハヤ”の方で、こちらが“”の方です…」
「気が利くね、ありがとう……じゃあ、はい。コレは、ちゃんに」
しかし、2つ渡した紙袋の内の1つが、私の前に返された。それは“”と名入れした方……
「……まさか?私にだったんですか!?頂けませんよ!」
「でも名前も入れちゃったしねー、返品不可でしょ?」
「それは、そうなんですが……どうして…」
「好きだから」
「…!?」
「一目惚れってヤツ…?昨日ココで会って好きになっちゃった」
「ぇ…えっと…?」
「ちゃん彼氏は?」
「いません…」
「お腹は空いてる?」
「まあ、はい…」
「じゃ、この後ゴハン行こーよ」
「そ、そんな」
「外で待ってるから」
「えっ…!ちょっと…!」
くるりと背を向けて、出口へ向かっていく彼。
矢継ぎ早に浴びせられたセリフの意味を頭の中で完全に理解できた頃には、彼の姿はもう遠く。
呼び止める暇もなかった……
この後食事…っていうか……私は、どうやら彼に告白されたようだった。