Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第5章 怪盗と夜のお散歩【キッド/快斗】
てっきり高いビルとかに行くもんだと思っていたら、着いた先は、閉館時間ギリギリのとある博物館で。
「大丈夫だとは思うけど念の為・・・監視カメラに顔映んねーようにな」
どこから取り出したのかキャップを頭に被せられた。
快斗くんも黒いキャップを目深に被り、博物館の中へ入る。
ということは、これが次の獲物の下見・・・か。
わたしは特に何か見たいものがある訳でもないし、キョロキョロしながら中を歩く。
「・・・この中に次の獲物があるの?」
「まだ無い。でも俺の予想が正しければここに展示されるハズなんだ」
「へー・・・」
「お、ちょっとちゃん、ソコ立ってよ」
「ここ?」
「うん、いい。いー感じ・・・」
カメラを片手に展示品や私を撮るフリをしながら、どうも博物館の室内の設備や、スタッフ、警備員を隠し撮りしてるっぽい快斗くん・・・
私、一緒にいていいんだろうか・・・
いや、いた方がデートっぽくて逆に怪しまれなくていいのかな。
一通り館内を見終わり外に出ると、今度は周りで一番背の高い、高層ビルへ入る。
エレベーターに乗り、彼が迷わず最上階のボタンを押し、巨大な箱が動く。
もしかして、いよいよ?と、心が騒ぎ出す。
着いたフロアは、人はほとんど帰った後なのか、物音はほぼ聞こえなかった。
廊下の端にあった非常口のドアを開けて、階段が続く小さな薄暗い空間に出た。
勿論、上へ向かう。
少し登ると階段はそこで終わっていて、また扉があった。
おそらく屋上に出る扉だろう。
でもここは南京錠で施錠されているようだ。
「なんの為の非常口だってなー・・・鍵かけてたらもしものとき逃げれねぇのにな」
「たしかに・・・って・・・やっぱり快斗くん、開けるの?」
「ったりめーだろ?金庫なんかに比べりゃこんなのオモチャみてぇなもんだ」
快斗くんが小さな器具を取り出して、鍵をカチャカチャやり出すと、ものの数秒でガチャりと開いた音がする。
・・・すごい。
思わず彼に感心してしまう。
でもこれってイケナイことじゃないか!?
止めはしないけど・・・
扉を開くと、外の空気を感じて。
暗い空間に一歩ずつ踏み出していく。
地上より風が強いように思う。