Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第5章 怪盗と夜のお散歩【キッド/快斗】
ここ最近、信じられないことが立て続けに起こり、怪盗キッドこと黒羽快斗と親密な間柄になった。
所謂〝身体の関係〟を持ってしまったあの日から、彼はしょっちゅう私のマンションに遊びに来るようになり。
出会った時とは違って、今はちゃんと玄関から入ってくるけど。
その快斗くんが、今日も来ている。
「今夜なら、大丈夫そーだな」
「ほんと?やったー!」
ハンググライダーのことだ。
キッドとして出会った時に、空の散歩に連れて行くと約束してくれたものの・・・
つい情事になだれ込んでしまったり、天気が芳しくなかったりで、実現していなかった。
今夜は雨もなさそうだし、風の具合も丁度良いとのことで。
「次の獲物も決まって下見もしたいところだしなー」
「え、下見に私も一緒に行く訳?」
「まーいいじゃん。下見はついでだって・・・」
警察官である父が知ったらどう思うか・・・
でもキッドの仕事の邪魔をするつもりは、更々無い。
「・・・どっちがついでだかね」
「俺はちゃんを最高に楽しませる自信はあるぜ?」
「ほんとにー?期待しちゃうよ?」
快斗くんの顔付きが少し凛々しくなって。
「・・・ご期待に添えるよう、今夜はこの大都会の空を全身全霊でご案内させて頂きます」
私の手を取り、その甲に唇を落とした。
彼はときたまこういう風にキザっぽく振る舞うことがあるんだけど、その姿はまるでキッドのようで(キッドなんだけどね)ドキドキしてしまう。
「うん、お願いします・・・」
「おや?お嬢さん、顔が赤くなってませんか?」
手を握ったまま、彼が下から顔を覗き込んでくる。
とても大泥棒だとは思えない澄んだ綺麗な目に、視線を囚われる。
「快斗くんがそういうことするからでしょ・・・」
「では、もっとして差し上げましょうか」
彼は、自分がキッドのような仕草をすると私がこうなるのを分かってて、わざとそう振舞ってはからかって楽しんでいるみたいで。
高校生に感情を弄ばれるなんてどういうことだ、とも思うが、相手は月下の奇術師怪盗キッドでもある・・・
複雑すぎる。
「んじゃー、行くか!」
「うん、どこから飛ぶの?」
「まーついて来いって!」
快斗くんに連れられるまま、宵の初めの街に出た。