Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第36章 溢れた水は杯に返るのか【沖矢昴】
「こうしているとまるで昔に戻ったようだな…」
「そうだね…不思議なくらい違和感ない…」
「……でもあの時は…すまなかった」
「……?何のこと?謝られる覚え…ない…」
「が大変な時に、支えてやることができなかった」
「……もしかして別れたときのこと?」
「そうだ」
「…あれは、全部私が悪い。自分のことでいっぱいいっぱいで…昴のこと何も考えてなかった…ごめん…」
「いや…僕がもっと堂々と構えていることができれば、乗り越えられたんだろう…ただあの時はそんな度量もなかった…僕の存在がの負担になるのなら、離れた方がいいんだと思ってしまった」
「そんな風に思ってたの…?」
「そうだが?」
彼に別れを告げた時、あっさり昴が引いたもんだから(引き止められても困ったと思うけど)……もうそんなに私の事は好きじゃなかったのかな…なんて思ってた。
昴はちゃんと私のことまで考えて、身を引いてくれてたのだ…自分が情けない……
「それなら尚更私が悪かった…ほんと勝手だった。ごめん!」
「悪いと思っているのなら……、僕ともう一度やり直せるか?」
「……や、やり直せるの…?」
「ああ……次は、何があっても離すつもりはないが」
隣から伸びてきた手が、私の手に添えられ、そっと握られる。
急に顔に熱が集まってきた。
ドクドクと高鳴ってくる心音……握られた手から昴にも伝わってしまうんじゃないかってくらい……
手元から徐々に視点を上げていくと、目が合ってしまい。
一見昴はいつもの優しげな表情だけど…目の奥の瞳はしっかり熱を持ってて…
不意に昔のいろんな夜のことが思い出されて、一気に体温が上昇してくる……
「、明日の予定は?」
「……一応、ゴルフ…朝から。お客さんと上司と……」
「…ゴルフ……明日の昼は雨じゃなかったか…?」
「そうそう、気になってたんだよねー…天気予報……」
話題が逸れたことに何処か少しホッとして……
手をやんわり振りほどき、スマホで天気予報を確認すれば、昼の降水確率は、80%……今朝より降る確率が高くなってる、つまりゴルフは無しになる可能性大だ……ああ…連絡入れなきゃな……
「ごめん、ちょっと電話してくる!」
昴をカウンターに残し、逃げるように店の外へ出た。