Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第35章 ヒミツの約束【快斗/キッド】
そうしてついに迎えたお泊まり当日。
昼過ぎに、家の近くまで快斗さんがバイクで迎えに来てくれて。
渡されたヘルメットを被り、荷物をたっぷり入れたカバンを背負って、バイクの後ろに跨った。
そーっと腕を快斗さんの前に回して、広い背中に身体を預ければ、伝わってくる体温にドキドキする。
間もなくバイクは走り出し……この前キッドに狙われた美術館や、私達の通う高校の側を通り……快斗さんのお家らしき所に到着した。私の家よりも、綺麗で大きな一軒家。
玄関の扉を彼が開けてくれる。
「初めてだな、がウチ来んの」
「はい!お、お邪魔します!」
靴を並べて脱ぎ、快斗さんの後に続きお家の中へ。酷く緊張してきた。頭の中で、ご家族用に用意してきたセリフを何度も繰り返す。
“こんにちは、初めまして、といいます、今日はお邪魔します、こんにちは、初めまして…”
廊下を少し歩き、リビングらしき所に通される。けど、そこはテレビも付いてなければ誰の姿もなくシンとしていて…お家の人は留守なのかも。
「あの…お家の人は出掛けてるんですか?」
「ん?言ってなかったか?俺、一人暮らしだから家に親はいねーぞ」
「っ!こんなおっきな家に一人!?…知りませんでした…」
「そっか。ま、だから、なーんも気ぃ使わなくていいしラクにしてろよ」
「はい……なんだ……私すっごい緊張してたのにー!」
快斗さんはひとりっ子であり、有名マジシャンだったお父さんが亡くなってることは知ってた。けど、今お母さんと一緒に住んでないとは知らなかった。
聞けばお母さんは世界中を悠々自適に飛び回ってるんだとか……
ウチの家族とは大違いだ。
「あれ……ってことは快斗さんって、掃除とか料理とか全部自分でやってるんですか!?すごい!」
「あー…でも料理はほとんどしねーな…」
「へえ…できるはできるんですか?」
「まーな。はできんのか?料理」
「毎日手伝いならしてるんで…多少はって感じですかね…」
「じゃーなんか一緒に作るか?今日の夜メシ」
「…っ!いいですね…!」
快斗さんと料理、すっごく楽しそう……!