Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第35章 ヒミツの約束【快斗/キッド】
「私、も…好き、です…」
「俺も好き。たぶん、お前と廊下でぶつかった日から」
「…そっ、そんな前から!?」
「…は違うのかよ」
「いえ!違いません…」
「そーだろ?……んじゃ、スマホ出して」
「は!はいっ」
ポケットからスマホを取り出せば、ズイッとこっちに寄ってきた快斗さん。急に近くなった距離に心臓が更に大きく飛び跳ねる。
「電話かけるから。貸して」
「はい…」
今にも震えそうな指先でロックを解除し、通話アプリを起動する…と、スマホは快斗さんに取られ、見知らぬ番号へ発信される。
直後、隣から振動音が聞こえ、快斗さんもポケットからスマホを取り出した。
互いに互いの番号を登録して、LINEのアプリにもお互いが出てきたのを確認し合う。私の手元を除き込んでくる彼のその近さに、もう心臓は破裂しそうだ……
“快斗”と表示されたアイコンをじっと見つめる。にわかに信じられないけど……これはどう考えても現実で……私達、思いが通じ合った、ってことなのか。
そのとき突如、昼休みの終了が近いことを知らせるチャイムが鳴り響いた。
「やば…行かなきゃ」
「ー、次授業サボんねー?」
「えっ!?ダメですよ…」
「……やっぱダメ?ま、そー言われると思ってたけど」
「行きましょう!」
「待てよ…」
立とうとしたのに腕を強く引かれて立ち上がれず。思いっきり腕を引っ張られ、快斗さんの腕の中に閉じ込められてしまった。
頭を優しく撫でられたと思ったら、あご先に彼の指が掛かり、持ち上げられ。
目の前には快斗さんの顔、次の瞬間には、もっと近くなってて…唇が、フワりと触れて……離れた……キス、したのか。
頭が真っ白になって、身体の力が全て抜けてしまいそうな感覚に戸惑う。
「これでは俺のモンだからな。他の男のとこなんていくなよ?」
「いいい…行く訳ありません!」
もしかしてキッドって…人に夢を見させられるんだろうか?
「快斗さんって、昨日、怪盗キッド…見ました?」
「ああ…テレビで見たぞ。アイツすんげぇよなー!今回も見事だったぜ」
「…ですね」
ずっと“泥棒は悪者”だと思ってたけど、悪くない泥棒もいるのかもしれない。