Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第35章 ヒミツの約束【快斗/キッド】
快斗さんの“秘密の場所”だという小さな部屋の中は、ガランとしてて、ほとんど何も物が無い。強いて言うなら座布団のようなものがひとつと、漫画や雑誌が少しあるだけ。
「ココ座っとけ」と差し出された座布団の上にとりあえず腰を下ろすと、快斗さんが隣で床に座り込んだから慌てて自分の座ってた座布団を差し出したけど、断られてしまい、結局私が座布団の上。
小さな空間に、妙な沈黙が流れる。
「あの…快斗さん…?何か用事ですか?」
「んー…用事っつーか……に会いたくて」
「ええっ!?……あ、ありがとう、ございます…」
「…も俺に会えてうれしーだろ?」
「そ、りゃあ……嬉しい、ですよ……」
胸が高鳴るどころの話じゃない、大変だ。快斗さんの秘密の部屋に二人きりなだけでもすごいことなのに、“会いたくて”だなんて私のハートには負担が大き過ぎる……
でもこれも…やっぱりキッドの所為(おかげ)なのかな……
「あの…聞いてもいいですか?どうして、会いたいなんて思ってくれたんです?…もしかして、誰かに何か言われました…?」
「は…?別に誰にも何も言われてねーけど」
「そ、そ、そうですか、すみません…」
「ただ……」
「はい…?」
「昨日、の夢を見た。なんかやたらキザな男にを取られそーな夢で、すげぇ嫌だった」
「へ、へぇ…?」
「だから、他のヤツに取られる前に自分のモノにしとこうと思った」
「へ……」
隣に座っていた快斗さんが、身体ごとこっちを向いたのが視界の端で見えた。
昨日私、確かにやたらキザな男に会って、突拍子もない約束ならしたけれども……
なんとなく、これから彼が言おうとしてる事が分かってしまったような気がして。でもどうしたらいいか分からず、ただ床の一点を見つめる……
「も俺のこと好きなんだろ?」
「……!」
“も”って…快斗さん“も”ってことでいいのか……
でも、それもこれも全てキッドの仕業だと思えば……少し強気になってもいい気がしてきて。
思い切って顔を上げ、快斗さんの方へ身体を少しだけ向ける。