Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第33章 助けたアイツが嫁になった【松田陣平】
結婚の前後こそ色々と大変だったが、それも落ち着いてしまえば俺達の生活は以前とさほど変わらなかった。変化点を強いて挙げるなら、の名字が松田になったくらいか。
そして今、現在。
時が経つのは早いもんで、もう暦の上では春と言われる季節になった。まだ外は全然さみーけど。
今夜は諸伏と二人で夜勤だ。だが特段の話題もなく、ぼんやりのことを考えながらタバコを咥えていた。
アイツと知り合って2年と少し、相変わらずは天然なんてものを通り越したバカだ、心配は絶えねえが、嫁としての務めはバッチリこなしてる、いい嫁と言えるだろう。
家事全般は全く問題ない。(たまに粉やら液体をブチ撒けることもあるが、その都度アイツはちゃんと綺麗に始末してるし)
セックスも……そりゃあ昔ほどの興奮はないにしろ、不満もない。
ただたまにはもう少し刺激的なモンがあってもいいような……気もする。
ムラっとしかけた気持ちを断ち切るように、短くなってきたタバコの火を消し、ふと時計を見れば、11時過ぎ……はまだ起きてる時間か。
「松田……今ちゃんのこと考えてただろ」
「んあ?なんで分かった…」
「顔がね、そう言ってた」
「そーかよ…」
「上手くいってるのか?」
「比べる対象がねーから分かんねぇけど、俺は満足してる」
「じゃあ、ちゃんも満足してると思う?」
「…ったりめーだろ、んなもん……」
は満足してんのかって…?そりゃそーだろうと勝手に思っていたが、聞かれると妙に不安になってくる。
「心配になってきただろー」
「っるせーな、嫁もいねーヤツに分かってたまるか…」
「いいよ?今日なんて何も無さそうだし、警らがてら家に顔出して来たら?“会いたくなって来ちゃった”ってさー。女の子ってそういうの喜びそうだし。班長とかゼロに知られたら怒られるだろうけどね」
「…女はそんなことで喜ぶのか?」
「ちゃんみたいな子はそうじゃないかな」
「なんでお前にのことが分かんだよ……」
「まあ…経験の差?」
「は?……あー…よく分かんねーけど……行ってくるかな……」
ムシャクシャしながら交番を出てチャリに跨り、凍えるような寒さの中ペダルを漕ぎ出した。