Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第33章 助けたアイツが嫁になった【松田陣平】
春になりが引っ越してきて、俺ん家も俺の生活も随分と変わった。
なんと言っても家中あらゆる場所が綺麗になったのもそうだが、荷物は確実に増えているはずなのに部屋が広くなった気がする。
リビングの壁にはカレンダーが掛けられ、俺との予定がそれぞれ書き込まれている。(ほとんど書き込んでるのはだが。俺は勤務日程を口頭で伝えるだけだ)
加えて有難いことにはメシを作るのもそこそこ上手かった。おかげで外で飲み食いすんのがめっきり減り、家に居る時間が圧倒的に増えた。
ただあまりにハギが寂しがるもんだから、一度家でのメシを食わせてやったら……何が楽しいのかハギはしょっちゅう家に遊びに来るようになっちまった。
最初は、東京に友達のいないの話相手にちょうどいいか、とも思ってたんだが……あまりに頻繁に来られるとウゼーのなんのって……
まあ、ハギには感謝もしてる。ハギがいなかったら、今頃俺達はどーなってたことだか……
あれはが越してきてスグの夏。家に二人でいた夜だった。
に買っておいてくれと頼んだ電球を……あのバカは、種類を間違えて買ってきていた。
そのことを大声で叱ったら、は泣きそうな顔をして家を飛び出してしまい。
まだそんなに土地勘もねぇだろうに何処へ行ったのかと思えば、交番で夜勤中だったハギに慰め宥めてもらっていた。
分かりやすく言えば俺は、対応外の種類の電球を取り付けたら割れたりしてもケガしちまうかもしんねーし危ないから気を付けろ、ってしこたま怒ったつもりだったんだが……ハギによれば俺は言葉選びのセンスが悪過ぎるんだと。
たしかに、電子機器の仕組みをほぼ知らねーヤツに専門用語を並べて怒ったって伝わらない訳だが……
俺はショゲたを引き取り、家に帰ってそりゃあ懇切丁寧に謝った。
一緒に過ごす内に、いつの間にかは俺の一部みたいな存在になっていた。離れるなんてことは想像もつかねーし、がショゲてるとコッチも心が痛む。
男と女が生涯ずっと一緒にいることが“結婚”になるのなら、俺の相手はコイツしかいねーんだろう、なんて思うようになってきたのも、この頃だったか。