Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第32章 POP HIS CHERRY【降谷零の場合】
店を出て、もと来た道を歩いて戻る。
せっかくだし、と手を繋ぐか…?なんて迷っている内に、わざとかは知らないが彼女が少しよろけて転びかけ、僕の腕にしがみついてきた。
「っうわ!転ぶかと思ったー…ごめん」
「いいって。何ならずっと掴まってたら」
「え…でも…」
“でも…”とは言われたものの、腕に絡められた手は解かれないままだ。
このままでいい。また転ばれても困るし、こういうの恋人みたいでいいじゃないか。
腕を絡めたまましばらく歩き、目星を付けていた所で足を止めればも止まる。
「ここでいいか?とりあえず部屋空いてるか聞いてみるけど」
「……うん…」
立ち止まったのは外資系のそこそこ名の知れているホテルの前。中に入り、一旦をロビーのソファに座らせ、フロントへ向かう。
見た目も態度も実にキリッとしているフロントマンに、今夜一部屋空いていないか、と尋ねれば、ちょうどいい部屋がたまたま空いていてすぐに案内できる、とのこと。
“たまたま空いている”が本当かどうかは知らないが。とにかく部屋が確保できたのはよかった。
紙に氏名と連絡先を記し部屋のキーを受け取り、の元へ戻る。
「いい部屋が空いてたらしい」
「よかった…」
ソファから腰を上げた彼女の前に肘を少しだけ突き出すようにすれば、再び腕が絡められる。彼女からなのか、ふわりと香ってきたいい匂いに心が浮き立ち、ついに下半身が疼き出した……
エレベーターに乗り込むと、がこちらを見上げてきた。髪を撫でて、僕よりも幾回りも小さな身体をそっと抱き締めると……やっぱりいい匂い。
もっと触れていたいけど…エレベーターが到着の音を告げた。扉が開く前に腕を離した。
部屋の扉を開け、を先に中に入れ、自分も中に入り、後ろで扉が閉まったのが早かったか、抱き締めた方が早かったか。今度は両腕でしっかりと彼女を抱き締めて髪に唇を落とす。
「本当に…いいんだな?」
「うん……だってその為に、来たんだよね?」
「そうだ……風呂は…?入るか?」
「入りたい…」
「とりあえず先にシャワーだけ浴びて来たら」
「うん」
腕を解くと、頷いたは無言でそろりと浴室へ向かっていった。