Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第32章 POP HIS CHERRY【降谷零の場合】
「零くん…めちゃくちゃよかった…すごくよかった!」
「こんな感じでいいのか?」
「うん。悪人も善人も“可愛い”とか“好き”って言われたら嬉しいんじゃないかなぁ」
「へえ……可愛いよ、は」
「へっ!?何今の…」
「別に。単純に可愛いと思ったからだ。女の子は言われたら嬉しいんだろ?」
「う、嬉しい…」
なんか、すごくやり辛くなってきた気がするのは私だけだろうか…?
外に出て、2軒目にちょうどよさそうな店を細い路地を歩きながら探しているのだけれど、さっきまでは何も気にならなかったことが気になる。
歩く度に肩が触れてしまいそうな近い距離、見上げないと見れない場所にある零くんの頭。
「危ない…」
「っ!ああ…ごめん」
零くんに肩を抱き寄せられてビックリしてたら、私の真横をタクシーが追い抜いていく所だった。
「ごめんな、気付かなくて」
肩を押され私は建物側へ、車道側を零くんは歩き出した。
「ありがと……でも女の子を誘おうと思ってるんなら、2軒目のお店くらいリサーチしとかないとね!」
「だな…次からはそうする」
変に胸がざわざわして、なんとなく、つい、変な強がりが出てしまった。
でもこの変な胸騒ぎは、零くんに対してなのか、“記者降谷”に対してのものなのか……
そもそもそれは私自身が感じているのか、“秘書”としての感覚が尾を引いてるだけなのか……
控えめな看板のしっとりした感じのバーを見つけ、木製の扉を開けて中に入る。
またここからは“役に入る”ことを、目を合わせ、無言で確認し合った。
薄暗い照明の静かな店内。私と彼はカウンターに並んで座った。
ちゃんとしたバーに来るのは久しぶりだ。とりあえず海外のビールから始めよう。バーテンダーに銘柄を言えば、隣の彼も違う種類のビールを頼んだ。
こういった店に来ると、どうしてもアメリカでのことを思い出す。
一人で入ったバーで知り合った男の人、(萩原くんとのあの猥談のネタになった人だ)その人はお酒の種類にも詳しくて、色々教えてもらって…
その時ホテルのバーラウンジで飲んだカクテルがすっごく美味しかったんだけど、残念ながら名前を覚えてなくて……
また飲みたくて、これかな?ってやつを頼んでみるんだけど毎回違ってばかりなんだよな……