Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第32章 POP HIS CHERRY【降谷零の場合】
「1回仕切り直しね!早すぎるよ零くん…こんなに早く自分の目的を言っちゃ…惹き付けて惹き付けて完全に惚れさせてからだよ…」
「すまない…」
「もし秘書も悪い奴だったら零くん消されるよ?」
「だろうな…っていうか。そこまで本気でやる必要あるのか?お遊びなんだからは僕の話にある程度乗ってくれよな…」
「…なんか面白かったから意地悪したくなったの。でも零くんいつもより男っぽくってよかったよ!さっきのあの眼で見つめられたら女の子はドキドキしちゃうだろうね」
「…どの眼のことだ?」
「んー…“先生が悪事を働いていたと分かっても、まだそう言えるか?”の辺り?」
「…参考にさせてもらう。で?どうする?この後は」
「だから…降谷記者は、まずは秘書をメロメロにさせるんでしょ?そしたらきっと、何でも言うこと聞いてくれるよ…」
綺麗な髪をいじり耳にかけ、頬杖をついた……妙に色っぽく見える仕草と声色に、思わず胸が高鳴った。
「どしたの…?ジロジロこっち見て……」
「…さんが可愛いなーって。見惚れてました」
「……そんなこと言っても何も出ませんよ」
「お世辞じゃないですからね?さんって、いつもは表情も所作もキリッとしてらっしゃいますけど……さっきみたいに笑ったり、お肉を食べてた時の顔なんてすごく可愛らしくて」
「……えっ?」
「僕はそういう顔のさんの方が好きです。今日は思い切って食事に誘って…本当によかった」
「ふ、降谷さん…?」
「もっと貴女の普段の顔も見てみたいな…」
「どうしたんです……あ、そろそろお話を聞かせてください…」
「すみません。重要な話なんて本当は無かったんです。ただ僕が、さんと二人で会いたかっただけで」
「そ、そうですか……」
また冷たく“話がないなら私はこれで失礼します”なんて言われる事も想定してたが……予想は良い方に外れ、彼女は斜め下を向いて黙ったまま。
これはいい雰囲気に持ち込めるかもしれない。
「この後まだ時間はありますか?もう一軒、行きません?」
「構いませんが……でも…先生には内緒にしてくださいね?」
「ええ。もちろん」
会計を済ませ、店を出る。そこでの演技のスイッチは切られたようだ。