Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第32章 POP HIS CHERRY【降谷零の場合】
零くんの変貌ぶりには驚いた。
私の知ってる彼とは違う、何か企んでそうな妖しい目付き…隙を見せたら一気に攻め込まれそうな感じ。
なんなら、カッコイイと思わなくもなかった。そりゃあ零くんの顔は元々整ってるけど、そういう事じゃなくて。ちょっとドキっとしちゃうような男っぽさも感じた。
いつもの零くんに戻ったのが若干寂しいくらい……
“なんか政治家っぽい!”って理由で近くの高級すき焼き店に予約を入れて。
零くんの車は一旦警察庁舎に置いてきた。
暇を持て余した私達は皇居の周りを歩き、日比谷公園までやってきて。二人で座れる所を見つけ、そこに腰を下ろす。
「やっぱり公園だとスーツは浮くね」
「二人してサボってるように見えてるかもな」
「ねー。夜泊まるとこはどうする?そっちも予約入れとく?」
「………、ひとつ聞きたいんだけど。女の子はどういうホテルがいいんだ?」
「うーん…?あんまりチープなラブホは嫌だよね、いかにもなビジネスホテルもイマイチかな…でもなぁ…それってあんまり重要じゃないかも…」
「…っていうのは?」
「私は、本当にいいなって思ってる人と素敵な夜が過ごせるんならどこでもいいかも…例えば山小屋みたいな所でも!けどまあ、それが綺麗な部屋だったら尚更いいのかもしれないね…」
同期の中で一番博識だと思ってた零くんが、真面目に私に教えを乞うてくるっていうのは……不思議な感覚で少しくすぐったい。
私なんて、教えられる程経験豊富でもないのに。
「なるほどな…」
「でも連れてかれるホテルで男の本気度を量るみたいなこと言う子もいるよねー…」
「じゃあ今回はどこだったら喜ぶ?秘書として」
「ああそっか……今日の二人だったら……いい感じになった成り行きでちょっといいホテルとか?近くにあるんならラブホも全然ありかな…」
「ふーん……やっぱりは場数踏んでるな、僕よりもずっと」
「いやいや言っとくけど私そんなにすごくないからね!?……っていうかこの手の話なら萩原くんに聞くのが一番早そう」
「そんなこと聞いたらアイツは“相手を紹介しろ”だの“その子の友達と合コンさせろ”だの言ってくるだろ…」
「たしかに……まさか相手が私だとは……言えないよね」
「言えないな…」