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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第32章 POP HIS CHERRY【降谷零の場合】


警察庁舎と議事堂なんて歩いて行ける距離なのに、面と向かってこの建物をじっくり眺めたのは初めてかもしれない。

近いようで、遠い……


近くのパーキングに車を入れて、真ん前まで歩いてきた。


「さーて!どうする?早速始める?秘書と記者」

「…そうするか」

「うん!じゃあ……少し待ってね……」


スー…ハー…と目を閉じて深呼吸したは…やっぱり綺麗な顔をしてると思う。

でも次に目を開いた彼女は、もう僕の知ってる彼女とはまるで別人だった。僕を蔑むような視線に、ぞわりと背すじが寒くなった。


「降谷さん…もうこれ以上お話することは無いと思いますが」

「…そう来たか」

「ちゃんと役に成り切ってください」

「…分かった」


僕も頭の中を完全に切り替える。

…僕は是が非でも今日この秘書と二人で出掛ける……


「そんなこと言わずに…この後…今夜でもいい、時間取ってもらえませんか?」

「先生はお忙しいので」

「僕が会いたいのは先生じゃなくて貴女なんですが…」

「…私ですか?」

「ええ。さんです」

「貴方に何のメリットがあるんです」

「大アリです。賢くて有能な女性とお話しできるんですから。でもどちらかと言えば貴女の方にメリットがあるかもしれません。食事でもしながら内密にお知らせしたい話があるんです」

「…どのようなお話ですか」

「それを今言ってしまっては、貴女を誘う口実がなくなってしまいますし…あまり大声で言える事ではないですね…美味しい肉か魚か、どちらがお好きですか?」

「…お肉」

「でしたらあそこの店がいいかな……予約入れます。何時にしましょうか」


スマホを取り出し、店に電話を入れる素振りをする。


「夕方以降なら空いてます」

「では5時半頃でも?」

「大丈夫です」

「……よし。一旦5時半まで演技は無しにしよう」

「えー?もう?」

「だって今の流れだと秘書と記者は一旦別れて夕方からまた会う感じだろ?」

「うわ、それ言ったの私かぁ……」

「夕食は肉でいいのか?店はどこにする?」

「どっかオススメあるー?」


元に戻ったに安心しつつ……

夕食の店を決めながら、歩いてまた車へ戻る。我ながら馬鹿らしいことをしてるのは承知だ。でも…どうせなら楽しんでやろう、と思えてきた。
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