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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第31章 POP HIS CHERRY【赤井秀一の場合】


先程とは打って変わって、残り僅かになったグラスの中身を見つめるの口数は、めっきり少なくなってしまった。気が張り詰めているのは、俺だけではないのだろう。

一先ず先に自分のウイスキーを飲み終え、グラスが空になったのを見せ付けるようわざとテーブルに音を立てて置く。

は困ったような顔でチラリとこちらを見て、おそらく最後の一口を…グラスを傾け、全てを喉へ流し込んで…遂に彼女の酒も空になった。


「……いいか?」

「はい…」


何に対しての確認だったのだろうか。バーを出る事、部屋に俺を招く事、その先の事……


席を立ち、俺よりも随分背の低い彼女の横に並び、細い腰に手を回す。
一瞬の身体が強張った気がするが、俺だって腕が震えそうだ。明らかに自分より小さい女らしい身体、彼女から香ってくるナチュラルな甘い匂い……


「部屋は何階だ?」

「は、8階……」


エレベーターに乗り込み、“8”のボタンを押す。狭い空間に二人きりとなり…意識的にその綺麗な髪に口付けた。またピクリと強張るが、今度は酷く可愛く見えた。



どうしても気が逸る。しかし焦っては駄目だ。もう獲物は手中にあるも同然だが…女は“余裕のある男”を好むと聞く。




8階に着き、の部屋の前。男である自分が扉を開けるべきか迷ったが、一旦彼女が開けてくれるのを待ち、開いた扉に手を掛け、彼女を先に部屋の中へ入れ、その後に続いて入った。


まだ清潔感を保ったままの広めの室内、毛足の長いカーペットが敷かれた上にはおそらくキングサイズであろう大きなベッド、その脇に、スーツケースが一つ。


「一人旅には贅沢すぎる部屋だな」

「ですよねー……好きに使ってください」

「ああ…そうさせてもらう」


部屋ではなくを今すぐ好きにさせてもらえるのなら、悩む必要も無いのだが…

こういう場合、直ぐにベッドに押し倒してもいいものなのか……とりあえずキスをするべきなのか……それとも抱きしめる方が先か。
それにシャワーはどうする?俺は必要ないが女は浴びたがるものだとも聞く……

経験を積めば、そういう判断もつくものなのだろうか…

様々な葛藤が頭を過ぎるが…

最も強烈な思念は…とにかく早く彼女に触れたくて堪らない、という事……
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