Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第31章 POP HIS CHERRY【赤井秀一の場合】
頬を赤らめ俯くに、用意していた台詞で畳み掛ける。“用意していた”とは言え、自身の口から出てくる言葉は殆どが本音と違わないが。
「そうやって恥ずかしがる顔も可愛いものだな」
「かっ!かわいくなんて、ないですから……」
「どうしてそんなに自分を卑下する……俺にとっては、今夜と明日…限られた時間だけだが、時間の許す限り一緒に過ごしたい、チャーミングな相手だ」
「あ、りがとうごさいます……私も…秀一さんと一緒にいられたら、そりゃあ、嬉しいですけど…」
ここまで“チャーミング”(可愛らしい、惹き付けられる)と感じた相手はが初めてだ。今まで自分の周りにいた女達は何だったのかと思う程だ……
「…明日は何時に起きる」
「うーんと……7時くらい、かな?」
「ではそろそろ部屋に帰るか」
「えっ…もうそんな時間!?……って、まだ10時前じゃないですか…」
時計を確認して、彼女はようやく顔を上げた。
さていよいよ大詰めだ。酷い緊張に胸が押し潰されそうだが……決してそれは悟られないよう、密かに深い呼吸を繰り返す。
「別に今すぐ帰って寝ろと言っている訳じゃない」
「…はい?」
「俺もの部屋に行ってもいいか?」
「……!?」
彼女の愛らしい眼が、パチパチと速い瞬きを繰り返している。“部屋に行ってもいいか”の意味を理解している証拠だろう。
遠慮がちに肘掛けに置かれていた小さな手に自分の手を重ねる。
「今は一秒だって離れているのが惜しいんだ」
「しゅ、秀一さん……」
の指に自分の指を絡め、ジッと表情を伺い見る。あちこち迷うように泳ぐ瞳、真っ赤な頬…小さな唇は何か言いたげに僅かに動いている。
何処からこの自信がくるのかは全く不明だが、拒まれる気は微塵もしない。
「これを飲んだら終いにしよう」
「……はい…」
もう一方の手でグラスを取り、酒を少量口に含む。
も、今までよりも更に時間を掛け、ほんの少しずつグラスの中身を減らしていく。一秒が数十秒にも思える、なんとも焦れったい時間だ。
しかし何度深呼吸を繰り返しても、緊張が全く解けないどころか、下半身が疼き出しそうで非常にマズい。目の前に裸の女がいる訳でもないのに…こうなるのは、普通のことなのか?