Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第31章 POP HIS CHERRY【赤井秀一の場合】
隣で明らかに嬉しそうな顔をして、薄いグラスを口元に運ぶ。
明日も俺が隣にいる事がそんなに嬉しいのか。
……彼女につられたか、自分の顔も綻んでいることに気付く。自然とこんな風に笑ったのは何時ぶりだろうか。
はとても素直でいい人間だ。裏表もない。そんな彼女を俺はステップに使おうとしているんだから……漠然と申し訳無い気持ちが今になって込み上げてきた。
もっと派手な見た目の遊び慣れていそうな女にしておくべきだったか……しかし今夜あの場に現れたのがでよかった、と先程から何度も思っているのも確かだ。
俺は彼女とは真逆の随分ひねくれた人間だが……せめてが今夜と明日を楽しんで過ごせるよう、その間は尽くすつもりだ。
彼女は何も知らなくていい、ただ楽しんでくれればいい。
のグラスの中身が空に近くなったのを見計らって、俺も自分のグラスの中身を飲み干した。
「コレすっごく美味しかったから次も同じのがいい!」と上機嫌で笑うに頷き、二人分のお代わりと、簡単なつまみも頼んだ。
彼女の飲んでいる酒は結構アルコール度数の高いカクテルなんだが(キールロワイヤル)…強い酒は大丈夫なのか?ある程度酔ってくれた方がコチラとしては本来好都合な筈なのだが、妙に心配になってくる。
「無理して飲みすぎるなよ?」
「大丈夫です!だってここ、私の泊まってるホテルですよー?」
「…それもそうだな」
小一時間後……心配は良い方向に当たったと言える。のご機嫌度は更に上昇し、声のボリュームも若干大きくなってきたように思う。
「でも秀一さんは、なんで私にここまで構ってくれるんですかー?」
「迷惑だったか?」
「いえ!全然!その逆です!嬉しすぎて夢みたいですよー…私お酒もだけど男の人と飲んだりとかってほとんど経験なくて…」
「俺だってそうだ…」
「っ、絶対ウソに決まってる…」
「ちなみに自分から知らない女性に声を掛けたのは、が初めてだぞ」
「……ほんと?」
「ああ。あの時は…ここで声を掛けなかったら一生後悔するような気がしたんだ…それくらい、が魅力的に見えた」
「…そ、そそんな…なんか恥ずかしい、な…」