Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第31章 POP HIS CHERRY【赤井秀一の場合】
すぐにホテルに着いて、秀一さんとエレベーターに乗り込んだのだけれど。
広くはない箱の中、途中で乗り込んできた宿泊客達に奥へ押しやられるような形で、彼と身体がものすごく接近してしまい。彼から香る甘い匂いにドキドキしちゃって…気が気じゃなかった。
こんな事でドキマギするなんて、何事も経験が足りなさすぎるんだろう。気を引き締め背すじを伸ばしてエレベーターを降り、バーラウンジへ向かう。
でも、扉を開けてもらい、中に足を踏み入れれば引き締めてた気持ちなんて忘れてしまいそうになる……!
広々としたフロアの奥の二面の壁は上から下まで全面ガラス張り。近付かなくても既に夜景が見える。ライトアップされてる記念塔までバッチリだ。
「ぅ…わぁ…!すごーい…!」(一応小声)
「たまには上から見下ろすのも悪くないな」
運良く(らしい)窓際のボックス席が空いていて。窓に向かって2つ並んでいる一人掛けのソファにそれぞれ座る。どっしりした肘掛け付きの高級感溢れる革のソファだ。
メニューブックにはお酒の種類も数え切れない程載ってて……選べなくて。
再び秀一さんにいくつか候補を挙げてもらった中から直感で選び、出てきたのは透き通った赤色にシュワシュワと気泡が立ち上る、細長い脚付きのグラスに入ったお酒だった。
ひとくち飲めばほんのり甘くて美味しい。眼下に広がるキラキラの夜景もそうだけど、パチパチ弾ける泡のおかげもあってか、すっごく気分が上がってきた。
隣でウイスキーを静かに飲む彼の姿は、本当にここの雰囲気に似合ってて、格好良い。
私もこんなお店が似合う大人になりたい……
「旅行は今日が初日か?」
「はい!夕方着いたばっかりです」
「こっちにはどれくらいいるんだ」
「えっと、明日の昼はワシントン観光して、夜までにはニューヨークに移動して…そこでまた泊まって、明後日の夕方に飛行機で帰る予定です…」
「明日周る所は決まっているのか?」
「うーん、あの記念塔と、博物館でしょ?それからニューヨークではとにかく街歩きしたいです!」
「…全部俺が案内してやってもいいぞ」
「っ……いいんですか?」
「ああ任せろ…明日は暇なんだ」
「ほんとに…ほんとにいいんですか?」
「いいと言っているだろう…」
秀一さんと明日も一緒…!?こんなことって、あるのだろうか…!