Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第31章 POP HIS CHERRY【赤井秀一の場合】
ど、ど、どうしよう……!
一人旅も一人飲みすら初めてだったけど、初対面の男の人と二人で飲むのも初めてだし、しかもその男の人こと秀一さんが私のほっぺたを触ってきた…!?
これってアメリカでは普通のコミュニケーション?
何もかもが初めてすぎて、全然分からない……
でも、今顔が赤いのはお酒のせいじゃないと思う…っていうかこんなに素敵な男性に見つめられたら誰だってそうなるでしょ!?
手に持っていたグラスの中身を全て飲み干す。あんなにフルーティーだと感じていたビールの風味まで、今はいまいち分からなくなってしまっている。
「ふぅ…」
「いい飲みっぷりだな。次はどうする?」
「っ、ええーっと…」
慌ててメニューに目を落とす。さっき彼に教えてもらったのの違うやつにしようか。
「ちなみに今夜の宿は何処だ?」
「…ホテル?○○○○ですけど…」
「すぐ近くだな。○○○○のバーラウンジならもっと酒の種類も多いし、夜景も見れるだろう?一度そこで仕切り直さないか?…まあ、あと一杯位ならココで引っ掛けてもいいが…おそらくココは時間的にそろそろ騒がしくなってくる」
「そうなんだ…」
ガヤガヤしすぎた雰囲気はあまり得意ではない。それに…夜景を見ながらお酒なんて…憧れすぎて“行ってみたい!”しかない。
彼が一緒ならどんな店でも恐くはない…でもこのまま彼と一緒に居てもいいのか……まさか“行きずりの関係”になんて…
なったりする…?
……いや、ならないか。私なんてお酒の飲み方も知らない、彼から見れば単なる同郷の小娘だ。
少しの間悩んでいると、入り口のドアが開き、酔っ払い気味なのか声の大きな人達が数人、店内に入ってきた。なるほど…ちょっとうるさいかも…
「…出ようか。」
「はい!でもいいんですか?私なんかと一緒でも」
「…そんな事を言うな。そもそも俺は君と一緒に飲みたいから声を掛けたんだが」
「…そ、そっか…すみません」
「“すみません”も要らん。もっと気楽な感じでいい」
「きらく…はい…」
席を立ち、秀一さんと一緒に店を出る。
少し前までは戻りたくなかったホテルへ足を向けてるのに、ひとつも嫌じゃない。むしろ心が浮き立ってるくらい。
隣に並んで歩く彼は、背も高いことに気付いた。歩いてるだけで格好いいんだからすごいよね……