Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第31章 POP HIS CHERRY【赤井秀一の場合】
「そっか……昔からって、秀一さんはもう結構長くアメリカに住んでるんですか?」
「そうだな」
「どれくらいになるんです?」
「大学の時からだ」
「へえ…!かっこいーい…私なんて〜〜〜」
という女との会話は無理なく弾んでいるように思う。向こうは俺に対して好い印象を持っているようにも見える。
まあ、初対面の俺に対して警戒心を解いているのは、彼女が平和ボケした日本人だから、というのも否めないが……
「〜〜〜〜で!酷いですよねー……だからフッちゃいました!この旅行もほんとはソイツと二人で来る筈だったんですけどね、もうこの際一人でいいや!って出てきたんです!でも思い切って来てみてよかったー!」
「一人旅を楽しめている、ということだな?」
「はい!今すっごく楽しいです!」
「…そいつはよかった」
「一人じゃなかったら、こんなに素敵な男性とお酒も飲めなかったと思うし!」
「…それは俺のことだと思っていいのか」
「他に誰がいるんですか!」
「…光栄だな」
どうやら俺はかなり好かれているようだ。この調子なら、ベッドに誘うことも可能か…?
いや、どちらにせよまだ早過ぎる。慎重に、徐々に、仕掛けていかねば。
機嫌が良さそうに笑う彼女の横顔に視線を送りながらしばらく様子を伺っていると……は俺の視線に気付いた途端に一瞬目を見開き、頬を赤く染め、押し黙った。
そんな様子も、ずっと見つめ続ける。
「あ、あの……」
「なんだ」
「私、何かおかしいですか?」
「…何もおかしくはないが…まあ…」
「な、なに…?」
「敢えて言うなら…の頬が赤いのは酒のせいか俺のせいか、どちらだろうな…とは思っていた」
片手で彼女の頬に触れる。瑞々しい柔らかさに戸惑いそうになるが、努めて顔には出さず、親指の腹で頬の高い部分を撫でた。
「えっ…ぁ…わたし、お酒、なれてないから…かな…」
「そうか、それは残念だ。いけるならあと何杯か付き合って欲しかったんだが」
「い、いえ!飲めます!まだ飲めます!」
は益々頬を紅潮させ明らかに動揺している。嫌がっているようには見えない…
それにしても自分の思うように目の前の彼女が動くことが楽しいと感じる。女を誘うことがこんなに面白いものだとは知らなかった。