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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第31章 POP HIS CHERRY【赤井秀一の場合】


女の誘い方や悦ばせ方は座学でひと通り学んだが、それは飽くまでも頭の中で理解しているだけだ。何事も未経験のままでは良くないだろう、と練習相手になりそうな女を探しに夜の街へ出てきた。

しかし、いざこういう事になって、自分から女に声を掛けたことなど…これまで一度も無かったことに気付く。
(勝手に向こうから女が寄ってくることは多々あった)


何度か利用したことのあるバーに入り、カウンターの端に座り、店内を見回してみるが……店内に数人いる女はどれも男連れだ。都合よく女が一人でいることなど…普通は無いものなのか。


ウイスキーを静かに楽しんでいるフリをしつつ、頭の中では知り合った女を最終的に何処へ連れて行くべきか…そればかりを考えていた。

ホテルのバーから夜景を見るのはどうだ?そのままそのホテルに泊まればいい…しかしこんな時間からでも部屋は空いているものなのか…


時たま入ってくる新しい客を横目で確認しては落胆し、内心溜め息を吐いてを繰り返す……

こんな日に限って言い寄ってくる女もいない。

三杯目の酒を頼むか、店を変えるかどうか、迷っていた時だった。


入り口から新しい客が入ってきた。若い小柄な女…いや、アジア系…しかも日本人か?……連れはいないようだ。

俺のいる席から空席を二つ挟んで座ったその女は…キョロキョロと周りを見ている感じからすると…観光客か。

綺麗な髪に黒い瞳、俺と同じ色の種類の肌。普段欧米人ばかり見ているせいか幼くも見えるが、彼女は所謂“美人”の類に入るだろう。
(俺は欧米人よりも日本人の容姿の方が好みだ)


……絶好の条件の獲物が現れた、と言うべきか。

逃したら次はこれ以上は無いだろう。

覚悟を決めて、声を掛ける……



「…日本人か?」

「えっ!え…はい!」

「珍しいな。俺も日本人だ(嘘だがそう言うのが良いと判断した)。一人なのか?」

「ほんと!まあ、今日は色々あって…一人、なんです…」

「俺も今夜は一人でね。よかったらご一緒しても?」

「いいんですか…?あ、このままじゃアレですし…私、そっちに行きますね」


席を立ち、俺の横の席に座り直した女。一人で来た割にはこういう店には慣れていないらしく、何を飲んだらいいか分からないそうで…酒の種類を教えてやり、自分の酒と一緒に頼んだ。

とりあえず、掴みは上々か……
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