Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第31章 POP HIS CHERRY【赤井秀一の場合】
〜アメリカ ワシントンD.C.〜 赤井秀一 24歳
ハニートラップ…
色仕掛けで対象を誘惑し、機密情報等を得る諜報活動…
そんな捜査の手法もあることはFBIに入局する前から知っていた…
入局当初に講習(座学)も受けたが……
FBIの人間としてアメリカで活動する以上、アジア系の外見の俺にそんな任務が舞い込むとは、考えてもいなかった。
ある反政府集団を追い詰める為の捜査会議にて、事は起こった。
集団の上層部に、中国系の女がいる。その女は幹部達の中では最も外での目撃情報が多く、つまり最も接触が容易いと思われる。
その女に近付き、内部情報を得て、集団の壊滅に繋げていくのが最速か……
となると、接近するのは誰が適任か……
その女のこれまでの男性遍歴を調べるに、過去の相手はアジア系の男ばかりだそうだ……
上官「……以上の事から、この任務は赤井くんが適任だと思うんだが……君はハニートラップはまだ経験が無いだろう?どうかね?」
赤井「やってみるしかないでしょう、最善を尽くします」
同僚「赤井なら大丈夫なんじゃないかー?コイツ女に困ることは無いそうだからな!コールガールもエスコートサービスも全く必要ないらしい!」
赤井「煩い、黙れ…」
上官「では決まりだな、期待しているぞ、赤井くん」
赤井「承知しました」
了承はしたものの、内心はかなり複雑だ。
何を隠そう……俺はハニートラップ以前に女を抱いたことすら無いのだから……
執拗に風俗に誘ってくる同僚に、“女には困っていない”と言って断ったことはたしかにあるが……正直に言えば、“風俗なんて恐ろしくて行けない”が本音だ。
人の気も知らないで……
俺はイギリスで育ち、アメリカの大学に進み…日夜アルバイトをしながらグリーンカードを取得し、FBIへの入局を果たした。
周りが羽目を外し出した十代後半以降……失踪した父の捜索に全ての目標を置いていた俺には、女に構っている時間など無いに等しかったのだ。
だが別に俺は女にモテない訳ではない…ガールフレンドのようなものがいたこともあった。
だが、毎日電話を寄越せだの、週末はデートしろだの…俺には到底無理な事ばかりを要求され、身体の関係を持つ前に向こうが去っていく…そんなことばかりだった。
こんな俺にこの任務は…務まるのか。