Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第30章 ときめきを貴方と【沖矢昴】
「昴さん!変声機!いじらせてください!」
「……はい?」
彼の首元に手を伸ばし、変声機のスイッチを触る。昴さんに声を出してもらいながら、推しキャラの声に近くなるように調整して…自分のスマホを指差す。
「これ、読んでください!」
「これですか?……“を愛してい」
「キャー!!!これも!これも!読んで!」
「ええ…“こんなに大切にしたいと思える相手に出逢え」
「わぁぁぁ……」
ちょっと棒読み感があるのは否めないものの、全てのセリフを推しキャラの声で聞けて私の目はハート状態…
区切りのいい所まで昴さんに読んでもらって、一旦ゲームを閉じ。
彼も変声機をいつもの設定に戻したようだ。
「最高でした…ありがとうございました…」
「…妬けますね…そんなにこの男が好きですか」
「違いますって!…甘ーいセリフで心の潤いをチャージしてるんですー」
「…さんが望むなら、僕にもこれくらいの事は言えますが」
「…っ、ほんと?」
「ええ。しかしまあ、最近はあまり言えていませんでしたか…」
たしかに…付き合った当初は“好き”とか“可愛い”とか…こっちが恥ずかしくなるくらい昴さんには色々言われてた…けど最近は…
「さん、こんな男じゃなく、僕だけを見てくれませんか…」
「あの、そもそも…!」
いつになく真剣な口調、真っ直ぐにこっちを向いている憂いを含んだような眼差しに、思っていた言葉が出て来なくなる。
「口に出さなくても、伝わっていると思っていましたが…僕はさんを心から愛していますよ?」
「あ、あ…りがとうございます…」
「…さんはどうなんですか?」
「わ、たしは…そりゃあ、好き、です、大好きですよ…」
「このゲームの中の男よりも?」
「当たり前です!ちゃんと、好きなのは昴さんだけです…」
「僕もさんだけです」
ジッと見つめ合ってしまい、妙に照れる。ほんと、久しぶりだ、こういう感じ。
頬を撫でられて、顔が近付いて、唇が触れ合う。
唇がゆっくりと離れていくと、今度は身体をそっと抱き締められた。
「…さん、今日は特に用事は無いんでしたね」
「はい…?」
「いい機会です、たっぷり分からせてあげましょう…」
「…?」