Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第29章 寄せは俗手で【羽田秀吉】
ドクン、ドクン、と絶え間なく聞こえるのはどちらの心臓の音なのか。そんな簡単なことも分からなくなるくらい、キツく抱き締められたまま……
今がもう夜中に近い時間で、ここは秀吉の家で、二人きりで……つまり何が起こったっておかしくない状況なんだってことに改めて気付き、落ち着かなくなってきた。
ふと秀吉の腕の力が緩んだ。なんとなく頭を彼の肩の辺りに預けたまま、自分からも腕を回してキュッと秀吉に抱き着いた。
ふぅ…と息を吐いた瞬間、頭のすぐ上から声が降ってくる。
「今日はもういい時間だし…帰る?それとも、もっと一緒に居る?」
「…ん、と……秀吉は…?…いてほしい?」
言った後になって、なんだかズルい聞き方をしてることに気付く。
私は…まだ帰りたくない。朝まで居たって構わない。
顔をゆっくりと上げて、秀吉の様子を伺ってみれば……予想外に妖しく笑っている秀吉に、ドクリと心臓が跳ねた。
「…聞かなくても分かるだろ?居て欲しいに決まってる。が嫌なら、仕方ないけど……でも嫌そうには見えないんだよね」
「…も、もしかして、顔に出てる…?」
「まあ…そうだね」
顎をくいっと持ち上げられ、もしやと思ったけど構える余裕を与えられる間もなく唇が重なった。
ビックリしたのと、ドキドキが過ぎるのとで、頭が真っ白……
ゆっくりと唇は離れたけど、まだソコは熱を持ったようにジンジンとしてる……
「…あっち行こうか」
「へ……ぅ、うん……」
これってもしや“そういう”流れなんだろうか。身体を押され、秀吉の家の中で未だ唯一入ったことのない部屋に連れて行かれてる気がする。
やっぱりそうだ……ここ、扉の向こうは寝室だ。
「…しゅ、秀吉?寝るの?」
「寝るだけじゃ済まさないけどね」
「……わ、たし……」
「何?」
「……お風呂…入りたい」
「うーん……ダメ。の全部を知りたいから……」
「あっ!えっ!?」
身体を持ち上げられてジタバタしてるとあっという間にベッドの上に寝かされてしまい、シーツに背中がついた。
薄暗い部屋の中、ベッドの上に乗って私を組み敷き、眼鏡を外した秀吉は……信じられないくらい色っぽくて……どうしよう、胸が痛くて熱い……