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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第29章 寄せは俗手で【羽田秀吉】


あまり普段は使われている形跡のないキッチンに立ち、鍋にお湯を沸かしながら具材の準備をする……
(インスタントラーメンとは言え、ある程度ちゃんとしたものを作りたい…だって好きな男の子に初めて作るんだから)

ただ、スーツを脱いでジャージ姿に戻った秀吉にぴったり横に張り付かれているのが、少し邪魔だ。


「秀吉…向こうで待っててよ…すぐできるから」

「やーだね」

「もう…」


唇を尖らせて可愛く拒否された……秀吉ってこんなキャラだったか。


「んー!美味しそう。ちょっとちょうだい」

「あっ……もう!」


さすがに煮卵やらチャーシューなんて作ってる時間は無いから豚肉と野菜を炒めたものを乗せようと思ったんだけど。出来上がりかけの豚肉を秀吉が摘んでしまった。


「美味い!美味いよ!は、いい奥さんになるね」

「そ、そう……?ありがと……」


私、奥さん…になるのか。やっぱり照れくさい……けどそれを悟られないように、口元を引き締めながら麺の袋を開けてお湯に中身を投入した。




そうして出来上がったラーメンを、彼はものの数分で食べ終えた。




「あー……美味しかった。ごちそうさま!今まで食べたラーメンの中で一番だね!」

「大げさー…」

「そりゃあ店のラーメンも美味しいよ?でも、に作ってもらったラーメンは全く特別だから」

「…そんなに喜んでくれるんならもっと早く作ればよかった」

「……待たせちゃったね」

「ん……何を?」

「にちゃんと気持ちを伝えるまで、結構時間掛かっちゃったなーって」

「えっ秀吉、歴代最年少の三冠賞金王じゃん!」

「でも去年だってチャンスはあった…っていうかもしも僕が1億稼ぐ前にが他の男の所に行っちゃったら、とか色々…僕は僕で焦ったりしてたんだ……」

「…大丈夫だよ?私、来年でも再来年でも秀吉を好きだったと思う」

「っ!ー…!」

「しゅ!?秀吉……!」


いきなり秀吉にギュッと抱きつかれて、頭が混乱しかける。


「大好き……」

「わ、わたしも……」


これまでに聞いたことのない、切ないような甘い声に、心が震えそう……


私達、結婚するのはとりあえず分かった、よしとして…だけどそう言えば私達ってまだキスも…何もしてない……!
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