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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第29章 寄せは俗手で【羽田秀吉】


秀吉が今夜のプロポーズに至るまでの経緯を説明してくれたのだけれど…申し訳ないことに私は何も覚えてない。

でもあの野球選手が20歳だった頃って、もうかなり前だ。そんなに前から秀吉がそんなことを考えてたのかと思うと……嬉しいやら恥ずかしいやら……


「……ってが言ってたから、今日までメチャクチャ頑張ってきたんだけど……ホントに覚えてないの?」

「覚えて、ない……でも私ってたしかにそれ言いそうなんだよね、言ったんだね、きっと……」

「言ってたね。だからさ……の返事が聞きたい」

「……いいの?私で…いざ一緒になってみたら変な所いっぱい出てくるかもよ?」

「がいいの。ずっと好きだったから」

「……私も、秀吉が、好きだけど……」

「それは知ってる。って分かりやすいから」

「うそでしょ……えっ!?気付いてたんならもっと早く言ってくれればよかったのに!」

「1億稼ぐまでは言わないって、あの時決めたから」

「……それも初志貫徹?秀吉のよく言う」

「そう」

「私結構悩んでたんだよ?一人でずっとヤキモキしてたのに……もう……あ…っ」


不意に左手を秀吉に取られて、大きな両手にそっと包まれる。すごく、あったかい……


「今度…指輪、見に行かなきゃね。どんなのがいい?」

「そんな…急に言われても……」


薬指の付け根の辺りを秀吉の指先が撫でてくる。なんだろ…すっごく恥ずかしくなってきた。顔が上げられない……!


「そうだ、二人で住む家も決めないと。マンションか戸建か…」

「ちょっと秀吉…気が早過ぎ」

「僕はずっと考えてたよ?」

「…全然、知らなかったよ……」


まだ頭の中の整理が追い付いてないのに、秀吉の話はどんどん先に進んでいく。

やっとの思いで顔を上げると……秀吉は清々しいくらいの笑顔。電飾が霞んで見えるほど、眩しいくらい、自然と私も笑ってしまうような。


その時だった。


明らかに私達に向けられているスマホとヒソヒソ喋る若者達の声に気付いた……もしかして秀吉の存在がバレてしまったか。背筋がサッと冷たくなる。

秀吉も気付いたよう。


「すみません、太閤名人ですよね!」


やっぱりバレてる……!
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