Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第29章 寄せは俗手で【羽田秀吉】
そこだけ、流れている時間が違って見える。
夜の街の中に現れた、無数の小さな光がキラキラと輝く壮大なイルミネーション。宝石を散りばめたような光の群れから目が離せない。
「きれーい……」
「…変な所じゃなかっただろ?」
「うん!そっかぁ……秀吉もこういうの好きだったんだ……」
「それはちょっと違うかな…が喜ぶと思ったから、来たかったんだよ」
「へ?そうなの?ありがとう……ほんと綺麗……」
年末ともなればそこかしこでこういったイルミネーションを催してるのはもちろん知ってる。だけどこういう場所って、カップルでごった返してるイメージだし……一人者の私には縁がないと思ってた。
うん…?もしかしたら今、私と秀吉も端から見ればカップルに見えてたり……するんだろうか。
いやいや、それよりもこんな所に秀吉がいても大丈夫なんだろうか(太閤名人だと気付かれたら大変だ)……周りを見回してみる。
幸い周りの人たちの視線はこちらには向いてはおらず、皆それぞれイルミネーションに夢中なようだ。
「……?聞いてる?」
「っへ!?う、うん、ごめん、何?」
安心して再びイルミネーションに魅入っていた所、秀吉にいきなり両肩を掴まれた。
ビックリして咄嗟に彼の顔を見ると…秀吉はさっきにも増して真剣な顔付き。
思いの外接近した距離に、心臓が無駄に跳ねる。
……急にどうしたのだ。
「、ちゃんと聞こえてるよね?」
「うん。聞こえてる」
「じゃあ……僕と、結婚してくれませんか…」
「……け?け、えっ!?えええ!?」
「僕も、1億円稼ぐ男になったよ?」
「……?え、っと……?」
話の流れが掴めない。
私は今プロポーズをされたのか?
私と秀吉は、恋人ですらないけど。
「ダメ、かな……?」
「……待ってよ、ダメとかじゃなくて!なんで、いきなり、そうなる…?」
「覚えてないかな?まあたしかに、昔の話だけどさ……」
「昔?……ごめん……いつのこと…?」
どういうことなのか、その昔に何が起こったのか……全く記憶にない。