Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第29章 寄せは俗手で【羽田秀吉】
料理を完食し、お腹いっぱい。なんだか分からないモヤモヤで胸もいっぱい……
店員さんに会計をお願いした所、「今日は僕が払うよ」と秀吉が財布を取り出し言う。
「今日はお祝いなんだからダメ!って言っても割り勘で申し訳ないけど…」
「いいから…今日くらい遠慮するなよ…も知ってるだろ?竜王の賞金……」
「あ……よ、4400万…?」
「そう」
そうだった、秀吉ったら今やスーパー高収入の男なんだった。ちょっと待て…今年の合計獲得賞金…いくらだ!?
「ねえ秀吉…今年いくら稼いだの」
「今までの賞金と、テレビと雑誌に、イベントだろ…それに今日の賞金を入れると…初めて大台に乗ったね」
「もしかして、億…?超えた?」
「超えた」
「うわー……じゃ!ご馳走様です!」
「うん。それでいい」
お会計は三冠の賞金王様に甘えることにして。
秀吉と二人、店の外に出た。冷たい外気に自然と肩が縮こまる。
「寒い?大丈夫?」
「そりゃあ寒いけど…?別に大丈夫だよ?」
「そう。じゃあ少し歩こうか」
「…うん?どこ行くの?」
「内緒」
「えーっ?変な所はやだよ?」
「変じゃないから。ついて来て」
2軒目は、何か特殊なお店にでも行くんだろうか。
隣を歩く秀吉の顔をチラッと見上げれば……あれ…?…なんか真顔っていうか……まるで対局中のような顔付き。
こういう雰囲気の時の秀吉は、すごく格好良い。普段のフニャフニャを知ってるからこそ、真剣な秀吉が余計にカッコよく見えるんだろう。
そう思ってるのは私だけだと思ってたのに…
「あれ?でも秀吉ってなんで今日スーツ?会見は着物で出てたよね。わざわざ着替えたの?」
「ん?…まあ、いいだろ?はジャージよりコッチの僕の方が好きみたいだし」
「それは見た目の話ね…秀吉は何着てても秀吉だよ」
「…ありがとう」
「う、うん……で?私達ほんとにドコ向かってるの?」
「もうすぐだから」
“ありがとう”って言った時の秀吉の笑顔が一瞬フニャっとしてて。それが思いの外可愛くて。こっちまで顔がフニャフニャになりそうだった。
そんなこんなで歩いてしばらく。
「わぁ……すごい……」
「だろ?ここにを連れて来たかったんだ」