Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第28章 手作りスイーツに下心【安室透】
さんは自分がストーカーに遭う覚えなんて、これっぽっちも無いそう。
だけど頻繁にポアロに同じ時間に来てたのだ、聞けば家を出る時間も、行き帰りに通る道も、毎日一緒だったそう。おそらくその途中のどこかで目を付けられたんだろう。
「これからはランダムに色んな道を通るようにした方がいいですね」
「そうします…もしかして、しょっちゅうポアロに行くのも辞めた方がいいでしょうか…?」
「ああ…でも、ご自宅やポアロを出る時間を毎回バラバラにされてみてはどうでしょう」
「なるほど…」
「さんを見れなくなるのは寂しいですしね。これからも来て頂きたいですから」
「私だってそうです…ポアロは一番のお気に入りですもん…」
そんな会話をしつつ、僕達は彼女の自宅前に到着した。
見た感じはちゃんとしたマンション。入口はオートロック、監視カメラも有るように見える。中に入れば安心だろう。
だけどさんの顔付きは冴えないまま。まだ、怖いんだろうか……
図った訳じゃないけど、聞くなら今がベストのタイミングか。
もしも何かあった時に駆けつけてくれる男性はいないのか、と尋ねれば……恋人はいないそう。
更に曇っていく彼女の表情。
「もしかしてさん…まだ、心配です?」
「……ちょっと、だけ…」
「差し支えなければ部屋まで送りますが」
「…お願いしてもいいですか?」
そんなのお安い御用だ。
さんと共にマンションの中へ入り、エレベーターに乗り込む。
「あの男の人……ここまでは来てないですよね」
「おそらく。でも心配なら出掛けるときに玄関のドアや郵便受けに紙切れを挟んでおくと良いですよ、もし誰かが開けたら分かります」
「ああ、そっか……」
ついにさんの部屋の前。鍵を取り出した彼女は恐る恐るといった感じで解錠する。が、ドアを開けることはせずにこちらを見上げてくる。(こんな時なのに可愛く思えて仕方ない)
「あの…安室さん。もう少しだけ、一緒に居てもらえませんか?一応、中に何も変わりないのを確認するまで……散らかってて恥ずかしいんですけど」
「はい。さんがいいのなら。僕も一応男なんですけどね」
「安室さんなら大丈夫です」
それは、どういう意味の“大丈夫”なのか。