Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第28章 手作りスイーツに下心【安室透】
「さん…ッ!大丈夫ですか!」
「ぁ、あ…むろ、さ……」
さんの元に駆け寄るなり、僕は無我夢中で彼女の腕を掴む男の手首を捻り上げた。
バランスを保てなくなったかそのまま真下に崩れ落ちそうなさんの身体を片手で抱きかかえ、男を睨みつければ、男はかなりの不服そうな面持ち。
「さん…この男は知り合いですか?」
「ぃ、い、え……」
「お、お前こそ!お前は!この子の何なんだ!」
「僕ですか?僕とこの方は、喫茶店の店員と、顔馴染みのお客様ですが」
「嘘だ!さっき!出てきただろ!一緒に!ホテルから!お前!この子に……」
「だったら何がいけないんですか。貴方こそ、明らかに嫌がってる彼女に何をしようとしてたんです」
震えているさんの身体を強く抱き寄せれば、彼女は僕の服の裾をギュッと握り締めてくる。
「お!俺は!ずっとこの子を見守ってたんだ!変な男が寄り付かないように!」
「ああ…ストーカーってやつですね」
なるほど、陰ながら思いを寄せていたさんが男とホテルから出てきたことで逆上してしまったか……妙な気配の原因はコイツだったんだろう。
「さん、警察を呼びますか?」
「…っえ、と……でも…」
周りをキョロキョロし出す彼女。僕達の周りにはわらわらと野次馬が集まり出している。さんとしては、あまり騒ぎを大きくしたくない、という所だろうか。
男の腕を更に捻り上げ、足を払い、その場に転がす。
「痛……ッ…何しやがる!」
「それはこちらのセリフです、今後彼女に近付いたら次はコレだけじゃ済ませませんよ」
「…クソッ」
男の腕を離せば奴は人を掻き分け一目散に逃げて行く。
その内奴の姿は見えなくなり、気付けば僕はさんを両腕で抱き締めていた。
「あ、安室さん、ありがとう、ございました……」
「いえ…当然の事をしたまでです」
「で、でもちょっと…あの、恥ずかしい、かな…」
「ああ。すみません。つい……」
腕の力を緩めれば、何故か聞こえてくる手を叩く拍手の音と賞賛の声。別に褒められたくてした訳じゃないんだが。
「やっぱりさんの家まで送りますよ。もう暗いですしね」
「はい…お願いします」