Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第28章 手作りスイーツに下心【安室透】
明るい室内には似つかわしくない文言が並ぶ小説を読み始めてしばらく経ち。
テーブルの向こうの安室さんが口元に手を添え咳払いをした。
「さん……」
「……はい?」
「結構…しっかり性行為の描写があるんですね」
「うーん…一般的な官能小説よりはかなり柔らかい表現だとは思うんですけどね…まあ、そういうジャンルの本ですから…」
「そうですか…あとひとつ気になったんですが……渉ってかなりガツガツしてますけど…女性は皆こういうのを求めてるんですか?」
「あ、それはちょっと違うのかも……可愛い後輩キャラが実はこう!っていうギャップがいいんです!それでつい許しちゃう、みたいな……あはは、私何言ってるんでしょうね、恥ずかしい…」
「へえ…」
なんだか自分の性癖のようなものを暴露してるみたいで恥ずかしい。
……と思ってたら、安室さんまで若干頬を赤くして照れたような顔をしてるもんだから、ますますこちらも恥ずかしくなってくる。
(だけど照れるイケメンもネタとして使えそう。コッソリ心の中のメモ帳に書き留めた)
「安室さん…どこまで読みました?」
「…二人が初めて身体を重ね終えた所ですね」
「それならまだやさしい所ですよ、これからもっと過激になります」
「そう、ですか……では申し訳ないのですが、また改めて一人で読ませてもらうことにします。このままでは変な気を起こしかねません……ネットでも買えるんですよね?」
「ああ、えっ…買ってくださるんですか!」
「ええ」
「うわー!ありがとうございます!」
今更だけど、たしかに官能小説なんて人前で読むもんじゃない。
“感想は後日またポアロで会えたらその時に”ということで、今日はお開きとなった。
ホテルを出れば外は夕暮れ時。もうすぐ日が落ちそう。
またしばらく安室さんと歩き、自宅近くの小さな交差点で別れた。