Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第28章 手作りスイーツに下心【安室透】
自宅やラブホテルじゃさすがに気が引けるので、近くのビジネスホテルの一室を借りて、安室さんに著書を読んでもらうことになった。(これまでのものは全部PCに入ってる)
ちなみに部屋は、ごく一般的なツイン。ベットが2つに、小さなテーブル、椅子が2脚。
テーブルにPCを乗せて、著書が揃っているライブラリを開く。どれを読みたいか彼に選んでもらうのだ。
それにしても…画面に並んだタイトルを改めて見ると、我ながらとてつもなく恥ずかしい単語の羅列……
「“No.1ホストに指名されました 〜美男に翻弄される夜〜”……“僕とカクテルを作りませんか 〜イケメンバーテンダーと甘くとろける夜〜”……」
「声に出されるとめちゃくちゃ恥ずかしいです……」
「でもご自身で作ったんでしょう?」
「それは、そうなんですけど……」
「あ…コレにします。“絶倫後輩刑事の執拗な愛 〜職務中にこんなこと、ダメなのに〜”」
「っ!これ結構お気に入りなんですよねー!まあ、内容はかなり現実離れしてますけど……」
「でも本の中ですからね」
「そういうことです。じゃあ…どうぞ」
クリックし、ファイルを開いて。
PCを真剣な顔で見つめる安室さんの様子を伺いつつ、テーブルを挟んだ真正面に座る。
「へえ…」とか「ふーん…」とか言いながら、彼はどうやら読み始めたようだ。
この小説のヒロインは20代後半の女刑事の美和子。ペアを組んだ後輩刑事の渉と男女の関係になっていく話。
勝気で強気な彼女の大ピンチを、それまではどこか頼りないイメージだった後輩が果敢に助けることで二人に愛が芽生えていくのだ。
しかしこの後輩刑事がセックスになると豹変、超ガツガツしてて凄いのだ。恋仲になってからというもの、張り込み中に発情し出して事に及んでしまったり、署内の資料室で始めてしまったり……
「へえ…二人が仲良くなる馴れ初めのストーリーもちゃんとあるんですね」
「女性向けですからね」
「なるほど…」
夕方前の静かな部屋。特にすることもないので。スマホを取り出し、久しぶりに私も自分の小説を読んでみることにした。作品は彼が読んでるのと同じもの。