Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第28章 手作りスイーツに下心【安室透】
「……でも安室さん、なんで、今日は、私…と?」
「本当は前々からお誘いしようとは思ってたんです。いつも来てくださるさんってどんな方なのか…色々知りたかったんですよね。でも今日分かってしまいました…作家さんなんですね」
「っ!?……もしかして、見ました?パソコン……」
「ええ。チラッと」
「あー……そう、ですか……」
やっぱり見られてしまってたのだ……顔を両手で覆う。一体どんな顔をすればいいのか、分からない。
「本当にすみません……昼間っからお店であんなもの書いてて……」
「謝らないでくださいよ……僕、怒ってるように見えます?」
指の隙間から彼を見てみれば、たしかに彼はいつものニコニコした笑顔……とりあえず手を下ろしたけど……無性に恥ずかしくて視線が泳ぐ。
「読んでみたいです。さんの書くお話」
「……私の書く話のジャンル、分かってるんですよね?」
「おそらくは。大人向けって言えばいいですか?」
とてもじゃないけど見せるのは気が引ける。しかも男性に見せるなんて……おまけに彼は勝手ながら登場人物のモデルにしていた張本人だ。
なんとか回避できないか模索する。
「そうなんですけど、私のは女の人向けのものなので…男の方が読んでも面白くないかと、思いますよ……」
「へえ、それは尚更興味があります」
「でも…ココじゃあちょっと……」
「では場所を変えましょうか」
「それは……」
「僕の家はさすがに嫌ですか?さんの家でも、例えばホテルでも、僕は構いませんけど」
「……ほんとに読みたいんですか?」
「はい。僕、普段から女性向けの本なり雑誌なりって読むんですよね」
「そうなんですか?」
「ええ。結構勉強になるんです。女性と接する時の参考になるので」
そんな勉強、彼には必要なさそうだけど。
じゃなくて。もうこれは不可避なのか。
でも、もしかすると、貴重な意見を聞けるチャンスなのかもしれない。
それに、密かな期待もある。普段眺めているだけだったこの安室さんのことをもっと知れれば、またそれも小説に活かせるかもっていう……
「読んだら…感想、聞かせてもらえますか?」
「もちろんです」