Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第28章 手作りスイーツに下心【安室透】
「僕達何度も顔は合わせてますけど、まだお互いの名前すら知らないですよね」
「あ…安室さん?ですよね?お店で呼ばれてるの聞いたことあります。私は、といいます」
「さん…僕は安室透といいます」
何故かポアロの彼と二人、米花町を歩いている。不思議な感覚だ。
「さんは近所の方なんですか?」
「近所…ではないですよ、隣町です」
「へえ……そちらからわざわざポアロに?」
「ええまあ……」
お店を出ても彼はずっと丁寧な喋り方。嫌いじゃない。それにきっと、歩くペースも私に合わせてくれてる。
安室さんの目的は皆目検討もつかないけど、今こうやって歩いてるのは…悪くない。
しかし最近涼しくなってきたとはいえ、今日みたいな天気のいい昼過ぎの日なたはまだ暑いと言える。
だんだん身体が涼を求めてきた。
「さん。よければどこか…落ち着いて話せる場所でゆっくりお話ししません?」
「私もちょっと思ってました。どこか…涼しい所がいいかな」
そうしてやってきたのはちょっと変わったカフェ。店内にはだいぶゆったりした席…席っていうか、お昼寝できそうな程寛げるスペースがそこかしこにあって、一人なりカップルなりが皆それぞれ好きなスペースでのんびりしてるっていう……まるで誰かの自宅のようなお店。
コーヒーを頼んで、安室さんと二人、かなり柔らかいソファに座る…いや、座るというより全体重を預ける感じだ。
「なんかこれ……寝れちゃいそうですね。私こういうお店は初めてです」
「僕もです……この前若い女性の常連さんが超オススメ!って言ってるのを聞いて…偵察も兼ねて一度来てみたかったんですよね」
「私はポアロの方が好きですけどね」
「ありがとうございます」
さすがに親しくもない男性と二人な状況で寝てしまうことはないだろうけど……かなりまったりした空気。
あまりにもまったりし過ぎてて、手を少し伸ばせば届くくらい近い所に彼が居るのに、不思議と緊張感も感じない。