Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第28章 手作りスイーツに下心【安室透】
「……あ……はい!あ、ありがとうございます」
「こちらこそ。いつものお礼ですから」
テーブルの横に回ってきた彼が、丸くて可愛いお皿をテーブルに置いた。
しかしお皿に乗ってるのがシフォンケーキ?に生クリームとイチゴをあしらったスイーツで、目が点になる。まるでついさっきの私の頭の中に出てきたものを実体化したよう。
「ごゆっくりどうぞ」
「は、はい……」
私が呆然としている内に彼はまたカウンターの中へ戻っていく。
そこでハッとした。PC、見られてないか……!?
昼間っからこんな破廉恥なものを見てる(書いてる)って知られたとなれば、恥ずかし過ぎてもうココには居づらいんだけど……
安室さんを見れば、目が合って、ニッコリ笑いかけられる。大丈夫、だったのか……?
でもその後はもう全然筆が進まず……出されたスイーツ(程良い甘さで美味しかった)とコーヒーを飲み干して、普段より早いけど今日は帰宅することにした。
お会計をしてくれたのも安室さん。
「ごちそうさまでした。ケーキすっごく美味しかったです」
「よかった。いつもよりお帰りが早いようなので、もしかしたらお気に召さなかったんじゃないかと思って……」
「いえ!全然そんなことは」
「この後ご用事でもあるんですか?」
「いいえ?」
「それなら……」
レジカウンター越しに彼が頭を近付けてくる。何事だ。
口の横に手を立てて、小声で彼が話し出す。
「僕、もうすぐバイト上がるんで、少し外で話しません?」
「え…ええ、大丈夫ですけど」
「じゃあちょっとだけ待っててください!」
安室さんは背を向けて店の奥へ引っ込んでいった。
……私に何の話があるのだ。
どこで待てばいいかも分からず、ボーッとレジの前で立ち尽くしていたら、すぐにエプロンを外した彼が店の奥から出て来て「お疲れ様でした」「お先に失礼します」と店員や常連客と挨拶を交わしている。
そして私の横へ。
「お待たせしました。行きましょう」
「は、い……」
カランカラン……とドアを開けられ、外に出るのを促される。