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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第28章 手作りスイーツに下心【安室透】


最近、僕のバイト先であるポアロに頻繁に来店している女性客がいる。誰も彼女の名前は知らないけれど、いつも決まって朝の9時半頃に現れ、コーヒーを頼み、奥のテーブルでPCを広げ、昼時にはランチを食べ、また新たなコーヒーを飲みながらPC作業、そして昼過ぎ~夕方には帰るっていうのがお決まりのパターン。

僕がポアロに勤め出す前からのお客さんらしいけど、こんなに頻繁に来店されるのは最近になってからだそう。


その女性が、昨日に引き続き今日も現れた。時計を見ればやはり9時半。


「梓さん……今日もいらっしゃいましたね、あの方……」

「ですね……ほーんと何してる方なんでしょうね……」

「おそらく今が仕事中…なんでしょう」

「でも安室さんのファンなのは間違いないですよね」

「それはないと思いますけど……」

「またまたぁ…謙遜しちゃって」


謙遜なんかじゃない。さすがに嫌われてはいないだろうけど、彼女にはおそらく……恋人がいると思う。

彼女、しばらく真剣な顔でPCを見つめていたと思えば、時折ものすごく色っぽい顔で小さな溜め息を吐いたりするのだ。

その艶めいた顔が僕の方を向いてくれたら……なんて思ってしまったのは一度や二度ではない。僕は密かに彼女に好意を抱いている。


PC画面の中には、愛しい男性でもいるんだろうか。

……気になる。


僕は今日こそ彼女との距離を縮めるべく、行動を起こすつもりだ。




昼時になり、パスタと温かい紅茶を注文した彼女。
いつもならそれを食べ終え、あと一、二杯コーヒーを飲んで帰るのが常なのだが。


「梓さん、後であの方に僕からサービスで甘いものをお出ししても構いませんか?」

「いつも来てもらってますし…いいんじゃないですか?でもどうしたんです?もしかして安室さん…あの人の気を引きたいとか」

「いや、まあ…そんな所かもしれませんね……」


パスタを巻き取り口に運び始めた彼女をたまに目で確認しながら、デザートの準備に取り掛かる。

僕の知る限り、彼女がポアロでデザートの注文をしたことはない。コーヒーや紅茶に、砂糖やミルクを使った形跡を見たこともない。

甘過ぎるものよりは、あっさりしたスイーツの方が好まれるだろうか。
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